2010年01月25日

本当の危機

本を整理していて、記念文集の類を見つけると、つい開いて見ずにはおられません。とりわけ個人を記念した文集などには気を惹かれます。

一口に個人の記念文集といっても、本人の文が中心のもの、寄稿が中心のもの、生前の刊行、没後の刊行、非売品、市販品などさまざまな形態がありますが、本屋の興味は、もっぱらその個人がどんな人かという点に係ります。

寄稿文集であれば、どんな人たちが稿を寄せているかを見ることで、その人間関係を知ることができます。随想、回想であれば、その目次を眺めるだけでも、人となりを窺い知ることができます。

古本屋は自前の人名事典を持つことが大切だと、これは確か出久根さんがどこかで言っておられました。それが飯の種だというようなことを。

そういう功利的な面を抜きにしても、読んで面白いものが多いことも確かです。今日手にしたのは『史想・随想・回想』(村岡皙・太陽出版1988年)。

ドイツ史学者としての令名は、不勉強で存じ上げませんでしたが、『日本思想史研究』を著した村岡典嗣のご子息に当たります。その父上を回想した小文の中に、父の持論が紹介されていました。

曰く「書物の真価は出版後五十年ぐらい経たなければ定まらない」。

昨今、出版の危機が声高に叫ばれていますが、本当の危機がどこにあるのかを、改めて考えさせてくれる言葉だと思いました。

konoinfo at 18:08│Comments(0)TrackBack(0)

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