2011年01月17日

寒中見舞い

ポツリポツリと、年賀状の答礼が届きます。その中に一通、寒中見舞いとともに、名宛人の訃を伝えてきたものがありました。

お客様へお出しする賀状は極めて少ないのですが、そのうちのお一人です。胸を衝かれる思いがしました。印刷文面の間に、女手で、当人は昨年十二月、七十五才で永眠した、と書かれてあったのです。

奥様にご面識はありません。しかし、ご本人がご来店のとき「家内と一緒に出てきたけど、向こうが買い物している間に、こちらへ寄らせてもらいました」と、いたずらっぽく笑っておられたのを思い出します。

仲の良いご夫婦であったことは疑いありません。時折、「あまり買うと叱られる」と、冗談めかしておっしゃってもいました。

それほど頻繁にお越しになったわけではありません。しかしその度に、古い英詩や古典のテキストを、数冊ずつお求めいただきました。後に、ある大学の名誉教授で、英文学をご専門とされていたと知りましたが、話題にしたことはありません。

若い人に良書を売ることは、本屋の大いなる使命ですが、識見の高い先達から喜んでいただける本を置くことも、本屋の大きな張り合いです。

その張り合いの一つが失われたことに、淋しい思いを禁じえません。早速お悔やみの葉書をお出ししました。

寒さの中、店先の盆栽の梅は、とうに満開です。

konoinfo at 18:23│Comments(0)TrackBack(0)

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