2011年01月31日

楽しい読書

鴎外、漱石の作品を一番熱心に読んだのは、小学校高学年の頃でした。図書室で「現代日本文学全集」に違いない、三段組の活字を追っていたのを思い出します。

何が面白かったのだろうか、と今にして思います。何も分からなかった筈なのに、と。

漱石などはその後、何度か読み返す機会がありました。しかし鴎外は、少しばかり知識がついてくると、かえって歯が立たない感じで、敬して遠ざけるようになりました。

『三田文学名作選』(「三田文学」5月臨時増刊、2000年)は、同誌の創刊90年を記念して発行されたものですが、その冒頭に鴎外の「普請中」という、ごく短い作品が載っています。

一休みの間に読んでみると、「高踏派」という言葉が浮かんできました。うろ覚えの文学史の記憶ですが、確か鴎外をそう位置づけていた筈。しかしどうも西洋文学史における「高踏派」とは違います。これは要するに「キザ」というのを、言い替えたのではないのでしょうか。

高級官僚とドイツの歌姫が、歌舞伎座近くの普請中のホテルで食事をする。それだけの話ですが、その背景や小道具は、現代に持ってきても結構「キザ」。悪い感じを受けたわけではありません。実際、色々と興味深く読みました。

まず、あの厳めしい軍医服姿の写真で記憶する作家が、一体どんな顔をして、こういう文章を書いていたのだろうかと想像してみる楽しみがありました。

さらに当時の人は、どんな感覚でこれを読んだのか、そう考えると「三田文学」という雑誌の購読者にまで想像が広がります。

年をとって増える楽しみもあります。


konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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