2011年08月22日

達人の域

先日ご紹介した田村隆一のエッセイ集、読み残したところを読んで、改めてその自在さに感心しました。

例えて言えば志ん生。そういえば酒好きのところも似ています。詩人ですから連想の飛躍はお手の物。散文として読むと意味の通じにくいところも、味わいで読ませてしまいます。

つまり文の向こうに田村さんがいるからこそ。下手に真似たところで読めた代物にはなりません。

RIMG3669そんな、あるいはほろ酔いで書いたかと思われるような章の一つで、「ぼくは誕生日を海外で三度祝ってもらったことがある」と書かれています。

そのうちの一度。「1971年はニューヨークの化石的ホテル。谷川俊太郎、アイオワから飛んできた吉増剛造、ダブリン帰りのジョイス研究家の大沢正佳など、ホテルのツイン・ルームで乾杯を受ける。酒はジャック・ダニエル」

ここを読んだとき、すぐ吉本隆明さんの言葉を思い出しました。どこかの対談(を本にしたもの)で、今の日本で詩人といえるのは田村、谷川、吉増の三人だけだと断言しておられたのです。

その三詩人が、1971年のニューヨークで打ち揃っている様子を想像してみるのは、なかなか面白いことです。

ところで、この章は三度の誕生日を一筆書きした後、話はいきなりロスのリトル・トーキョーに掛かっていた大きな「赤玉ポートワイン」の壁面広告に移り、その町の思い出で終ります。

最晩年、その軽やかな筆致。

konoinfo at 19:51│Comments(0)TrackBack(0)

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