2011年11月21日

買うといったから

自転車が止まって、ご老人が荷台から紙袋を下ろしておられます。やがて、それを手に提げて店内に入ってこられました。その帽子姿、先日の「平家物語」の方です。

「これを買ってもらおうと思って、持ってきたんだ」と、笑顔で差し出されます。受け取って袋の中を拝見。単行本が2冊と、文庫本が25、6冊。

五木寛之『青春の門』(講談社文庫)が揃っているようです。ほかに山本周五郎とか、山崎豊子とか。ただし、いずれも旧い版で、しかもヤケていたり、カバーがスレていたり。

講談社学術文庫(芳賀徹『明治維新と日本人』)が一冊あって、比較的きれいな状態。これだけでもお買取りしようと頁を改めてみると、赤いボールペンであちこち線が引かれていました。

さて、これでは値のつけようがありません。正直に、そう申し上げました。ご老人、驚いたように目を瞠って、「まったくダメかね」と仰います。「この前、文庫なら買うというから持ってきたんだが」

婉曲に申し上げたのでは、何度も無駄足を踏ませてしまいそうです。お気の毒とは思いながら、何故買えないのかを、はっきりとお伝えしました。

「じゃあ、捨てといてくれよ」と、いくらか憤慨されたご様子。「喜んでお捨てするわけじゃありませんよ」と申し上げRIMG0636ると、少し気を取り直されたか、「頼むよ」と言い残して帰られました。

先代の林家正蔵(のち彦六)のように、軽くビブラートの掛かった喋り声が、耳に残っております。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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