2012年03月24日

近くて遠きは

「覚えてる?」そう言って店主の顔を見つめるご婦人。

見つめ返すと「あ、忘れちゃったか」。それで思い出しました、先日、研究室の本の処分についてご相談いただいた、退官間近の東大教授。

前回は帽子をかぶり、大きなマスクをされ、おまけに眼鏡。思い出せたことが不思議なくらいです。

紙袋をひとつ、目の前に置きました。「あとひとつ」と表に出て行かれ、自転車から重そうに別の紙袋を運んでこられました。

「これは古いけど、同じシリーズが研究室に沢山有るの。要ります?」と化学関係の学習書。「ご専門の立場から、まだ役に立つと思われますか?」そう質問すると「でも、同じような本を学生に見せたら、ほとんど持って行きましたよ」

「うちではお金を出して買っていただかなくてはいけませんので」

「じゃ、これは?同じものが何冊もあって。こんなに送ってこられても困るんだけどね」と出されたのは、ご自身も参加されたらしいシンポジウムの報告書、または論文集。他には、これも送られてきたらしい校史、社史。

CA3K0116「残念ですが、当店では評価は付きません」
「時間の無駄だったか。電話してから来れば良かった。学校に寄付するしかないかな」
「あまり喜ばれないと思いますよ」
「そうかもね」

「三万円もした分子化学関係の洋書なんかはどう?専門店に持っていったほうがいいかな」
「それはその方が」

結局、中公新書二冊と、「なぜ私のところに有るのか分からない」というひと昔前の少年漫画五冊を残して、あとは再び自転車に積んで、お帰りになりました。

二十年以上駒場におられた先生にとって、小店はついに近くて遠い場所のまま終りそうです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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