2012年04月29日

遅すぎる悼辞

CA3K0178連休といえば、お持込みが増えると相場が決まっているのに、いつも実際にそうなってから、そうだったと気づくのです。

しかし今日あたりはまだ、多い方でも、キャリーバッグに詰めて引いてこられる程度。お部屋の片付けは、むしろこれから本格化するのではないでしょうか。

何件かのお持込本の中に、『古本でお散歩』(岡崎武志、ちくま文庫)が一冊紛れておりました。その刊年(2001年)にまず驚かされます。もう10年以上も前のことなんだと。

本書の解説は、「彷書月刊」編集長にして「なないろ文庫ふしぎ堂」店主、田村七痴庵が書いています。改めて読んで、その肉声が甦りました。

彼は、店主より少しばかり早くこの業界に潜り込んでいて、知り合った頃にはすでにしっかりと南部支部に溶け込んでいました。その当時から、憚ることなく関西弁で通していましたが、不思議な訛りがあるので気になって尋ねたことがあります。それで紀州田辺の産だと知りました。

古本屋にも「上手い文章」や、「面白いお話」を書く人は多くいますが、「面白い文章」は、彼にとどめをさします。まともな話をまじめに書く、というのは彼の美意識に合わなかったかのようです。

会って話すと、とりわけお酒が入ったりすると、かえって真剣に絡んでくることがありました。まじめな話は素面では出来ない、そんな衒いを持った男でした。

「古本屋にとって、古本を扱うっていうことは、毎日が発見の日であって、ああそうだったのかと、目からうろこがおちていく毎日なのです。この、発見のどきどき、ドキドキ、がなくなった時、古本屋は死ぬのです」(前掲書・解説)

七痴庵、まだ死ねなかったはずです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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