2012年08月17日

まるで相互扶助

RIMG1270おかげさまで、昨日は記録更新を免れることができました。

閉店間際、時々、古典語の本などをお買い求めいただくお客様がご来店になり、机の脇に積み上げてあった、OxfordのPlatonis Opera全5巻を見つけられ「これはいくらですか?」とお尋ねになったのです。

ギリシャ語の原典に、John Burnet が校注(ギリシャ語、ラテン語)を入れている版です。初版が出たのは1900年、以来、今日まで版を重ねてきた、文字通り古典中の古典。

現在も新刊があるはずですが、状態が良ければ古書でも殆ど価格は変わりません。小店でも15,000円で、過去に二度ほど販売した記憶があります。ちなみに現在は、一巻だけヤケシミのある本が混じったセットを12,000円で出品中。

お尋ねになった一組は、三方にシミ斑が目立つものでした。一部の巻に線引き、書き入れもあります。しかし版面は総じてきれいです。今月の低調な売上を少しでもカバーしようと、格安で店頭に出すことに、心を決めていました。「全部で五千円です」

さすがに驚かれたようです。それから、しばらくの間、迷っておられました。「とても貧乏なんですよ」そう仰いながらも、一冊ずつ手に持って、状態などを確かめておられます。

やがて一大決心をされたように、五千円札を一枚、お出しになりました。「これで今夜は食事抜きです」

それが本当かどうか、店主には知る由もありません。しかし、そう伺う前に、五百円玉を一枚手にしておりましたので、行きがかり上「これで何かお食べください」と申して、お渡しいたしました。

まるでディケンズかギッシングの世界ですが、彼らの話に現れる店主は、もう少し裕福。というか、小金を溜めているような気がします。あやかりたいくらい。

小店のケースは、ほとんどお客様との相互扶助。今日はまだ、扶助の機会に恵まれておりません。


konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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