2012年08月18日

本筋を逃す

RIMG1241午前中に驟雨。午後から日が差すと、今度はうだるよう。少し前に洋書会で仕入れた、美学関係洋書の一口を整理。

市場に出たとき面白い口だと感じました。コンピュータ関係の本が大量にあって、その他に言語学や記号学関係。そんな中に、美学や芸術関係の本が混じっていたのです。

店主も仕分けに関わり、自ら美学芸術学関係を選び出してまとめました。天に厚く埃が積もったままの状態で運び込まれたこともあって、良い状態には見えません。おかげで他に誰も札を入れず、下札で落札しました。

その埃を落とし、汚れを拭いてみると、案外傷みは少ないようです。その中に、とりわけ古い一群がありました。

Lipps, Asthetik/ 1-2.(1903,1906)
Dessoir, Asthetik und allgemeine Kunstwissenschaft.
(1906)
Cohen, Asthetik des reinen Gefuhls/1-2. (1912)
Volkelt, System der Asthetik/ 1-3. (1925-)

いずれも美学史上に名だたる大著。さすがにヤケもあり、良好な状態とはいえません。一部に赤鉛筆などで書き入れもあります。しかし更に良く見ると、扉の隅に Y.Onishi と筆記体で書かれているのを見つけました。

この本を、この時代に読まれている Onishi といえば、他ならぬ大西克礼(1888-1959)。お名前の読みを確認すると「よしのり」イニシャルは Y。

この他に、まだ数冊、同時代の美学書があり、これらはすべて大西氏の旧蔵書だと思われます。しかし全体からすると、ほんの一部。今回の一口の旧蔵者が、おそらく譲り受けたものでしょう。

果たして何者か、果然興味が湧いてきました。お名前は分かっています。他の沢山の本に、記名があったからです。早速googleで検索すると、「世界的なコンピュータ・アートの先駆者」として、ドイツで開かれた回顧展を紹介するページがありました。

そうして見ると、あの蔵書の本筋は、山のようにあったコンピュータ関係書籍の方だったのでしょうか。貴重な本があったかもしれません。あったとして、それを活かすことのできる本屋が、買ったのでしょうか。気になるところです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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