2012年09月22日

圧倒的多数派の一冊

RIMG1408市場に現れるたびに、次々と最高値を更新する――という本もあれば、かつての高値がウソのように値崩れしてしまった本もあります。

そしてもちろん、後者の方が断然多い。それこそ掃いて捨てるほど。一方で、前者は数えるほどでしかありません。

ですから値崩れした本のことなど話題にしたらキリがないのですが、昨日の市場でいささかショックを覚えた一冊がありましたので、そのことについて。

具体的な書名を挙げてお話しすると、現に売られているお店もありますので、色々差し障りがあるといけませんから、いくつかのヒントだけでお話しいたします。

昭和初期に刊行され、日本人が編んだ英国の画家にして詩人の書誌として、国際的な評価も得ながら、同時に意匠を凝らした限定本としても世間を呻らせた本。

高いときは100万円を超えて取引されたことがあるように記憶しています。ヴェラムと藍染和紙の重厚な装丁は、函から取り出されて展示されると、威風あたりを払って見えたものでした。

限定200部、この部数は、限定本としては必ずしも少ないとは言えません。それにも拘らず高値がついたのは、書誌としての需要が海外からもあったからと聞いています。

時移り、その学問的な価値は減じてきました。残されたのは、いわば工芸品としての価値。そうなると現在売られている価格あたりが相場となるのでしょうか。ネットで検索しただけで、数件の在庫が確認され、ほぼ似たような価格帯でした。

ここまでは、誰でも調べがつくことです。ではいくら入れるのか、となるとそれぞれの思惑と、経験、そして懐具合で決まります。

結果は、店主にだって充分手の届くような値段でした。と言っても何人かが入札しながら、それより高い値をつけた人はいなかったわけです。店主だって、いざ入れるとなれば、その値段を入れられたかどうか。

しかしそれにしても、それが、この本の現在の価値なのだろうかと、つくづく考え込まされたのでした。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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