2012年10月16日

『千夜一夜物語』

お客様から、Burton編訳のThe Book of the Thousand Nights and a Nightを手に入れたいと言われ、しばらく気をつけて交換会や、ネット上に目を凝らしているのですが、探すほどに難しさが増してきます。

RIMG0872見つからないのではありません、むしろ有り過ぎるのです。このところ、市場でこそあまり見かけなくなりましたが、ネットを検索すれば、実に多様な版がヒットします。

『千夜一夜物語』原典の成立について、さまざまな研究があることは勿論ですが、バートン版が生まれるについても、多くの考証がなされています。それはともかく、この版が世界各国の言葉で翻訳され、最も普及している版であることは確かでしょう。

ところで今日の洋書会に、そのバートン訳『千夜一夜物語』が出品されたのです。中扉にBaroda Editionとありました。補巻が6冊で全16冊。この版はこれで揃いなのですが、他に補巻7冊、全17冊という版もあります。Shammar Editionなどがそうです。

この巻数の違いが何によるのか、双方を比較してみないことには分かりません。おそらくは詳しい研究書があるはずですが、まだそこまで調べる機会はないままです。

バートン版は、Burton Clubという名の下に、会員制で何度も部数を限定して出版を重ねており、そのたびにこうして何々Editionと表記したもののようですが、これらがいわば普及版。しかしそれが果たして何種類あるかも、寡聞にして存じません。

小店のお客様のご興味は、いわばその受容史にあります。わが国に、どのように入ってきて、どんな影響を与えたか。ですから、過去、この国に最も普及した版を、お望みである筈です。

というわけで、その点では目的にかないそうですが、色々と考えた末に入札はしませんでした。なぜなら今日の一組は、総革箔押しの綺麗な装丁で、お客様の趣旨にも、またおそらくはご予算にも合わないのではないかと考えたからです。

実際、強い札が入っておりました。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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