2012年12月27日

ヘンリ・ライクロフトの嘆き

紙袋一つ、二つといったペースで、まだ刊行後、比較的日の浅い本をお持ちくださる先生がいらっしゃいます。多くは寄贈本として送られてきたものでしょうが、本もきれいで売り易く、いつも助かっております。

今日も久々にご来店になり、また10数冊をお売りくださいました。例によって、値をつけて棚に差し、あるいはネットにあげれば、すぐに売れそうな本ばかり。

こういう先生が、あと何人かおられたら、小店の仕入れは随分楽になるのですが、そうは問屋がおろしません。

今日お持ちいただいた中に、洋書が一冊混じっておりました。ご専門からして、洋書があること自体には何の不思議もないのですが、ただ一冊、他の本とは不釣合いで、思わずしげしげと眺めてしまったのです。

高さが23.5cm、幅が19cm、ソフトカバー。初めは教科書か、サブテキストだろうかと思いました。しかしすぐにこれこそが、かの悪名高き「出版スパム」、Kessinger社のPOD本であると分かりました。刊年もなければ、原本についての表記もありません。いわば「あおぞら文庫」をダウンロードして印刷製本しただけのようなもの。

イメージ (107)この本が『ヘンリ・ライクロフトの私記』であるというのは、大いなる皮肉かもしれません。というのも、経済的に恵まれなかった愛書家の、まさに心を打つ文章が、そこには書かれているはずだからです。

店主はその文章を、中学生になって通い始めた、小さな英語塾で読まされた記憶があります。もちろんその当時は、戦前アメリカに暮らしたという老先生が、口を極めて絶賛するギッシングの文章に、全く感じるところはなかったのですが。

さいわい店の棚に岩波文庫の一冊を見つけました。日本語のありがたさ、中を開いて、すぐに該当の箇所を探し当てました。

第45頁から始まる第12章。いつの間にか、読んだことすら忘れておりましたが、この一章を含め、本書は今こそ読むべき本なのかもしれません。

この難解な文章を、半世紀近い昔、中学生相手に講じた老先生の面影が、俄かにはっきりと浮かんでまいりました。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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