2013年04月22日
ムッシュの署名本
いつものようにふらりとムッシュがやってきて、しばらく話をしていきました。ムッシュは自称にして通称で、もちろんmonsieurのこと。
パリに魅せられて数十年、いつか写真集を出したいと、撮り溜めた写真アルバムを、時折持参しては見せてくれたりする万年青年。店主などより年上のはずですが、気持ちだけでなく見た目も歳よりずっと若い。
その彼の今日の話題は村上春樹のこと。「本人には罪はないんだろうけど、あの現象にはちょっと辟易しますね」と。
実はムッシュ、若き日の村上春樹と知り合いであったと、あるときご自分から話してくれました。何でも彼のジャズ喫茶の、上だか下だかで、やはり店をやっていたという関係らしい。
「あの頃は、ウチなんかの方がずっと流行っていて羽振りも良かった」のに、「今じゃ、とても昔の知り合いだなどと、顔を出せるような状況ではない」というのが、それ以来、その話になるたびに、決まって出る締めくくりの言葉です。
今日は、昔寄せ書きをしてもらったことを振り返り、「でも確かあれには名前も何も入っていなかったからな」と、人に分かってもらえないだろうことを残念そうに語って、帰っていかれました。
ところがものの10分も経たないうち、一冊の本を持ってまたご来店。言い忘れましたがムッシュ、ごく近所にお住まいです。
「そういえば、こんな本があったのを思い出したんで」。そう言って差し出されたのは『雨天炎天』(村上春樹文 ; 松村映三写真、新潮社1990年)。
その一冊を開くと、見開きに黒々と太いフェルトペンで、ムッシュの本名が書かれ、その下に作家、写真家それぞれの署名が入っています。
「彼の字かしら」とムッシュ。確かに間違いありません。献呈名を書いたのも、どうやら村上春樹自身のよう。後から写真家が自分の名を書き加えたのが、ペンの色具合から分かります。
「お宝ですね」そう申し上げると、「お宝だね」と答えられて、再び帰っていかれました。
パリに魅せられて数十年、いつか写真集を出したいと、撮り溜めた写真アルバムを、時折持参しては見せてくれたりする万年青年。店主などより年上のはずですが、気持ちだけでなく見た目も歳よりずっと若い。
その彼の今日の話題は村上春樹のこと。「本人には罪はないんだろうけど、あの現象にはちょっと辟易しますね」と。
実はムッシュ、若き日の村上春樹と知り合いであったと、あるときご自分から話してくれました。何でも彼のジャズ喫茶の、上だか下だかで、やはり店をやっていたという関係らしい。
「あの頃は、ウチなんかの方がずっと流行っていて羽振りも良かった」のに、「今じゃ、とても昔の知り合いだなどと、顔を出せるような状況ではない」というのが、それ以来、その話になるたびに、決まって出る締めくくりの言葉です。
今日は、昔寄せ書きをしてもらったことを振り返り、「でも確かあれには名前も何も入っていなかったからな」と、人に分かってもらえないだろうことを残念そうに語って、帰っていかれました。
ところがものの10分も経たないうち、一冊の本を持ってまたご来店。言い忘れましたがムッシュ、ごく近所にお住まいです。
「そういえば、こんな本があったのを思い出したんで」。そう言って差し出されたのは『雨天炎天』(村上春樹文 ; 松村映三写真、新潮社1990年)。
その一冊を開くと、見開きに黒々と太いフェルトペンで、ムッシュの本名が書かれ、その下に作家、写真家それぞれの署名が入っています。
「彼の字かしら」とムッシュ。確かに間違いありません。献呈名を書いたのも、どうやら村上春樹自身のよう。後から写真家が自分の名を書き加えたのが、ペンの色具合から分かります。
「お宝ですね」そう申し上げると、「お宝だね」と答えられて、再び帰っていかれました。
konoinfo at 19:30│Comments(0)│TrackBack(0)│
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