2013年06月29日

見抜く目

美術品、骨董品の世界には贋作、贋物が付き物ですが、古書の世界でもあるというお話。

しばらく前の明治古典会に、初版本を偽造したものがたくさん出たことをお伝えいたしました。これなどは、まだ人を欺くためというより、自らの楽しみの部分が多いように見受けられたものです。

もっとも贋作者の心情というのは、皆そうだとも言えるわけで、腕が上がることで、罪が深くなるわけです。見抜ける程度の偽造なら、笑って済ませることも出来るでしょう。

先日、『吾輩は猫である』のカバー付初版三冊が、市場に出ました。本体はどうやら間違いなく初版らしいのですが、カバーがどうも怪しい。仲間数人で、喧々囂々、意見を述べ合っておりました。

曰く、猫の眼の開き具合がちがう。カバーの丈が本体に比べて短すぎる…。やがて一人が、どこからか近代文学館の覆刻版を携えてまいりました。

RIMG0311二つを合わせると、一目瞭然。誰の目にも分かる違いがあったのです。出品されている『猫』のカバーには、「上編」「中編」「下編」の文字がそれぞれ認められました。もちろん、本物の初版カバーに「上編」の文字はありません。

言われてみれば、当たり前のこと。研究者、専門店なら常識以前に属する知識でしょう。その時、その本を取り囲んでいたのは、たまたま専門外の業者ばかりであった、ということにしておきます。

これは偽造ですらありません。ですから初版だと思って買ったとしても、騙されたと言うことにもならないでしょう。

さて今度の七夕に、宮沢賢治の書簡が一通、出品される予定でした。しかし目録にも載ってから、これが偽造の疑いが強いことが判明し、出品を取り止めることになりました。

どこかの美術展のように、贋作展でもやってみると、面白いかもしれません。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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