2013年11月18日

コミュニケーション・ツール

店を開けて間がない午前中、一人の女性が帳場の前に立つと、タブレット端末を差し出して、その画面の文字を指し示し、次にその手を「アリマスカ」と棚の方に向けて振りました。

見ると「茶道」の二文字、その後に中国語の簡体字らしいものが続いています。「これは何?」と日本語で尋ねると「Book」と英語の答えが返ってきました。

それからはお互い英語のやり取り。しかし店主同様、それほど得意というわけではなさそうです。

それでもどうやら茶道具類の図版に興味があると分かったので、少しばかり並んでいる棚へ、案内しました。

するとすでに一人の男性が図録を一冊抜き出していて、それがお連れさんらしい。「このあたりの本をご覧ください」と言い置いてあとはお二人の好きに任せました。

RIMG0637時折何か言い交しているようでしたが、ごく低声で、何語を話しているかも分かりません。あまり長いこと静かなので、ちょっと様子を見に行くと、男性は床に座り込んで図録を繰っておりました。

それでもやがて、何冊かの本を帳場にお持ちになり、お勘定を済ませると、女性が今度は道を尋ねたそうです。

目的地の発音が難しいのか、またタブレット端末を出して操作すると、読めない文字列のなかに「下北沢」という三文字が見えました。そこまで歩いて行きたいと言います。

日本人相手に説明するのだって、楽ではありません。線路伝いに行けば着くということは確かなのですが、ずっと線路が見えるわけではなく、そこを迷わずに行く目印を教えられるほど、詳しくもないのですから。

「一時間くらいかかりますか」と、どうしても歩きたい様子なので、ともかく線路に沿っていると思える道を行きなさいと、まず駅のガードを潜り左へ向かうまでを教えました。

あとはお二人の、方向感覚を信じるしかありません。もし迷ったとしても、タブレット端末で尋ねながら行けば、一時間もあれば着くだろうと、送り出したのでした。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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