2013年12月21日

蜜柑の値打ち

「千両蜜柑」という落語、ずいぶん昔に、TVかラジオで一度聞いたきりですが、忘れがたい話としてずっと記憶に残っています。誰の噺で聞いたかは、覚えておりませんが。

大店の若旦那が病に伏し、その原因が季節外れの蜜柑食べたさのあまり、という出だしのナンセンスさがまず落語的。

命を受けて奔走する番頭が、ようやく見つけた蜜柑が一つ千両、というところが話しのミソ。

筋立てや人物造形は、噺家によって差異があるそうですが、最後、若旦那が食べ残した蜜柑を持って番頭が逐電するオチは、共通しているようです。

聞いたのは、この商売を始める前のはず。古本屋となって、市場で高額な落札を目にするようになると、一層この噺が身近に感じられるようになりました。

実際、一冊の本や一枚の版画が、何十万、何百万円という価格で取引されるのを見ると、それを欲しがっている若旦那の姿を想像してしまいます。

RIMG0743ところで、先日の洋書会の歳末市では、Nゲージ鉄道模型が大量に出品されました。

一見同じようなパッケージが幾つもあり、メーカーの在庫かと思いましたが、見るとひとつずつ車両番号の異なるものです。

聞くところによれば、40代で亡くなったあるマニアの持ち物だったそうで、その収集ぶりに、感心しつつ半ば呆れてしまいました。

しかし考えるまでもなく、読み切れない蔵書を山と残して世を去ることと、あまり違いはないわけです。

いずれにせよ、不思議な情熱が人間にはある。千両の蜜柑を欲しがる人が、居てもおかしくありません。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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