2014年12月24日

てンで カッコよく

改まった席、たとえば会議のような時ででもない限り「中野さん」などと呼ぶことはありませんでした。ふだんは大抵「トモチャン」。後輩たちも、親しみを込めて「トモサン」。今年還暦を迎えても、いつまでもそんな呼びかけが似合うヤツでした。

中野書店の二代目にして、実際上の店主、中野智之。今年7月の七夕大入札会以降、ふっつり市場に顔を見せなくなり、やがて再入院したとか、あまり具合がよくないらしいとか、噂だけがたまに聞こえてくるばかり。

親しい仲間と、時おり茶飲み話に、どうしているのだろうと話題になりましたが、時間が経つにつれ、不吉な想像を抑え込むのに苦労するようになっておりました。

ですから、12月19日と日付が変わった夜中、Yさんからメールが届いて、その一昨日に亡くなったらしいという文言を目にした時は、ただ溜め息しか出ませんでした。

22年前、お互い初めての理事を二年間、共に務めました。11年前、新会館のオープニングセレモニーの実行委員を頼み、一緒に本を作ったり、イベントを開いたりしました。

本年初頭の玉英堂書店斉藤孝夫さん逝去に伴う「偲ぶ会」が4月に持たれたときは、同じく実行委員に名を連ねました。『古書通信』には、彼の印象的な追悼文が掲載されています。

その年も改まらぬうちに、追悼した相手を追うようにして去ることになるとは。ご遺族の意向で、家族葬を済ませるまで内密ということでしたので、昨日、業界にファックスが流されるまで、ともに悲しめる相手は限られていました。

今では業界人の多くが、大きな喪失感に捉われていることでしょう。店主がそうであるように。

トモチャンとは、もうひとつ共通項がありました。芝居への興味関心です。店主の方はすっかり過去形ですが、彼は現在までそれを持ち続けていました。

織田信長の謡いけり/人間わずか五十年/夢まぼろしのごとくなり/かどうだか 知っちゃいないけど/やりてえことを やりてえな/てンで カッコよく 死にてえな/人間わずか五十年/てンで カッコよく 死にてえな (福田善之 詞・林光 曲)

死に方はともかく、カッコよく生きたトモチャンでした。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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