2015年03月29日

オバチャン

世の中には桜しかないような騒ぎの今日この頃ですが、今年は「ハクモクレン」が、とりわけよく咲いているのだとか。

教えてくれたのは、小店の入っているミレイユ駒場に、管理会社から派遣されてくる、お掃除オバチャン。オバチャンといっても、失礼にはならないと思います。店主よりいくらか年上の方ですから。

ともかくベテランの清掃婦さんで、とりわけ建物の中よりは、草木のある外部の手入れがお得意らしく、時おりその薀蓄を披露してくれます。

それによると、去年はエサ不足とかで、多くのモクレンの花実がヒヨドリなどに食い荒らされて、かなりみじめな有り様だったのが、今年はどこでも、良く花をつけているというのです。

オバチャンがあるお百姓さんから聞いたところによると、ヒヨドリはキャベツなどのほうが好物で、今年はそちらが十分に得られたのではないか――と、モクレン繚乱の理由を分析していました。

ひとしきり話した後、「もうこっちに来ることもなくなるよ」とポツリ。もともとは、週に何度か来ていたのが、何年か前に一度、契約が切れたので、もう来られないと告げに来たことがあります。

RIMG0060その後、しばらくは顔を見なかったのですが、何時からか、今度は月に一、二度のペースで、草木の手入れにやってくるようになっていました。それがいよいよ、会社との契約も打ち切りで、ご本人曰く「クビになったのよ」。「でも、10年になるって」。

お喋りの好きなオバチャンでしたから、週に何度か来ておられた時分は、朝の掃除の折などに、うっかり捕まらないよう、気を付けなければなりませんでした。

月に一、二回となってからは、仕事を終えて帰る前に文庫を一冊二冊、買ってくれるようになり、その度に今日のように、帳場の前の椅子に座って、なにかしら話していってくれました。

「あとは、年に一回か二回、歯医者さんに来るくらいかね。この年で歯医者さんを変えるのもいやだからね」

まだお目にかかる機会はありそうです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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