2015年04月29日

『東大駒場学派物語』

イメージ (18)店主にとっては実におもしろい本でした。もう6年も前に出ていたのに、今度読むまで知らなかったなどというと、著者からお叱りを受けそうですが。

著者の小谷野さんとは、面識はありません。しかし本書を読むと小店が開業した4年目あたりから、院生として駒場に通われていたわけですから、小店にも何度かお寄りいただいているはずです。本屋のオヤジと親しく話すようなタイプとは思われませんので、店主の乏しい記憶に残ることもなかったのでしょう。

何がおもしろかったかといって、これほど知ったお名前が登場する本も他にないからです。そのなかには、単に名前を存じ上げているというばかりでなく、今でも時にはお目にかかり、あるいはお便りを交わしたりする方々もおられます。

そんな駒場の「比較文学比較文化研究室」の歴史を、もっぱら人物中心に綴ったもので、店主などから見るといささか露悪的にさえ感じますが、しかし、だからこそおもしろいのであることは否定できません。

たとえば「手の切れるような美人だよ」という妙な言葉が紹介されています。これは「比較四天王」の一人である御大が、ある大学からの人材要請に対し、斡旋の言葉として述べたものだそうですが、そんな一言から、御大の人物像や、当時の研究室の雰囲気が伝わってくるようです。

ちなみに、その「美人」は店主も良く存じ上げている方で、一時期は研究資料を集めるお手伝いなどもいたしました。ご当人がこれを読まれたら、さぞ苦笑されることでしょう。

また、本書は殆どが実名で書かれていますが、中には例外的に仮名やイニシャルによるものがあります。そのほとんど唯一のイニシャル人物について、それを目にした途端、誰であるかが分かりました。そうした理由は、おそらく現在の不遇を察してのことだと思われます。

著者はそもそも自分の「不遇」を、半ば売りにしている人ですが、それだけに、著者のその人物への眼差しが、決して冷たいものでないことに、救われる思いがいたしました。

それにしても、店主にとっては確かに面白い本でしたが、他に一体、どれほどの読者が、この特殊な本に興味を持つでしょうか。

konoinfo at 18:40│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

平日午前10時〜午後7時、土日祝日は午前10時から午後6時まで、毎日営業いたしております
Profile

河野書店

Archives