2015年06月24日

ごつごつした山

内輪の話で恐縮ですが、先日、娘が友人と軽井沢に一泊旅行に出かけました。その土産話を聞くうち、車から見える「ごつごつした山」が話題になり、それが何という山であるか、家人と三人、あれこれ詮議する羽目になりました。

軽井沢へ向かう高速道路から目につく山、しかもごつごつした山、といえばそれだけで、少しでも山の知識のある方なら、簡単に正解されるでしょう。

そこが無知の悲しさ。浅間だ、赤城だと知っている山の名を手当たり次第に上げて、ネットで山容を確かめるのですが、娘は首を振るばかり。やがて、何かの拍子に妙義という名が出て大当たり、ようやく溜飲を下げたのでした。
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今日届いた昨日の落札品の中に、岩波書店『図書』の野上弥生子特集号(1980年6月)が入っていて、それを開いた表紙裏に「『迷路』原稿」という大江健三郎の一文があり、斜め読みしていくと次のような文章が目に入りました。

野上先生は僕の文体を批評して、《……山の形でいうと、浅間は夕方みると鋼鉄の山みたいだけど稜線はおだやかですね。ところが妙義はごつごつしていてそうじゃない》といわれた。妙義派の僕がいうまでもなく、『迷路』は真の浅間派の文体で書かれている。

せっかくですから続けてもう少し引用。

しかし重く暗い時代に、さきのせつから小説全体の結びで老貴族に愛されるとみまでが、性=生殖の根本的な衝動にたくす再生の希求は、先生の妙義派としての側面をもかいま見させるのではあるまいか?野上先生が『森』を書きつづけられる北軽井沢大学村で僕も夏をすごすが、そこへ向う車中で妙義から浅間が視野に入るたびに、お辞儀のようなものをする自分に気がつく。

この特集号は、大岡信との対談や谷川俊太郎の詩が載っていて、なかなか面白く、得難い資料だと思ったのですが、「日本の古本屋」を検索してみると、しっかり何点か登録されておりました。それも案外リーズナブルな価格で。ちょっとがっかりしたことは否めません。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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