2015年06月30日

名士書簡

あえて名は伏せますが、明治の偉人に数えられる一人。その人物の書簡をお持ちだという方から、ご相談を受けました。

買い取ってもらえるところを探しているのだが、とても高価なものなので、どこか良いところをご存じないか、あるいは「七夕」のようなところに出品してもらえないか、というわけです。

この方、小店に直接出向いてこられたのですが、あいにく出かけていて、店からかかってきたスマホを通じてお話をいたしました。

ですからもう一つ、詳しいところまでは伺えませんでしたが、その方のおっしゃるには、手持ちの書簡は2000万円の値打ちがあるものだそうです。

RIMG0269思わず耳を疑いました。どうやら以前、「なんでも鑑定団」にその偉人の書簡が出たようです。しかしそれは自筆ではなく、口述を筆記したものだったとか。それにも拘らず200万円という額が提示されたといいます。

説明によれば、その偉人は悪筆を恥じてか、自ら筆を執ること少なく、ために今日までに確認されている自筆書簡は、その偉人の記念館が所蔵する2通に過ぎないといいます。従って、もしそれが自筆であれば「一桁違っただろう」と、その番組で語られたらしいことが、WEB検索の結果、判明しました。

この方の思い込みは、そこから来ているようです。どこでかは聞き漏らしましたが、筆跡鑑定を受けて、真筆だとの証明も受けているとのことです。記念館に買い上げて貰ったらいかがですかと申し上げたところ、すでに問い合わせ済みで、「お金がなくて買えない」というのが、その返事だったといいます。

「2000万円というのは坂本龍馬クラスの金額ですよ」と申し上げても、「こちらは(ご自身のものを含め)3通しか現存しないのですから」と、ひるむ様子はありません。

「鑑定団」は、他人事として楽しんで見る分には無害な番組ですが、時に罪作りな結果を引き起こすこともあるようです。

「その数字が頭から離れたら、如何様にもご処分方法の相談に乗らせていただきます」とお伝えして、電話を切ったのでした。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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