2016年01月28日

かなしいオンデマンド本

RIMG0719つくづく悲しくなるのは本の造りのお粗末さです。と、いきなり申し上げてもお分かりいただけないでしょうが、昨日も話題にしたフランス書の話。

その一冊のタイトルに見覚えがあって本を開くと、60年近く前に出版されて以来、何度か版を重ねたファクシミリ版と見えて、版面がいかにもコピー然としています。しかし表紙にはnouvelle editionと麗々しく印刷されていますし、発行年も新しい。

よくよく調べていくと、巻末の書誌が差し替わっていて、ここだけは版面も鮮やか。つまりこれで、れっきとした新版なのでした。

厚手の紙でくるんだだけのペーパーバックですから、多くを望むのは無理だとは分かっております。しかし、同じ並製本でも昔のものは、もう少し趣きがありました。

この本の場合は、新版ですので事情が異なりますが、不条理を感じるのは単純なリプリントのオンデマンド版が、実につまらない造本で多数出版されていることです。

その殆どは、少し探せば元版が、時にはずっと安い価格で、幾らでも見つかるのです。多少ヤケたり、傷んだりしていても、元版の方がずっと読みやすいと思いますよ。

いずれにせよ、この手のリプリントは、たとえ新本同然でも古本屋の商品にはならない気がします。単なる消耗品にしか思えないのですね。

一方で、今や洋書需要のメインストリームになりつつあるディスプレイ本の世界では、本らしい本が大量に求められています。オンデマンド本は、ここでも喜ばれません。

この調子で行くと、いまに古い本は全てディスプレイ用に買い占められて、やがて枯渇してしまうのではないか――、そう心配しているのは、当のディスプレイ業者たちです。

古い本は飾り用。読む人はオンデマンドで、あるいは電子本で、と言う時代がもう来ているのでしょうか。

konoinfo at 19:56│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

12月31日から1月3日まで
休業いたします
Profile

河野書店

Archives