2016年11月13日

買うのに苦労した本

2箱の段ボールが着払いで届き、中には封筒に入った一通のワープロ印刷文書が添えられていました。

洋書を2箱お送りします。いずれも92歳の私が専門とするクラシック音楽の書籍で、大部分がウィーンのドブリンガーで求めたものです。
日本では容易に手に入れられないものばかりなので、音楽を専攻する日本人はもちろん、在日外国人も飛びつくに違いありません。私もこれらを買うのに苦労したものです。
処分にあたり、それぞれの買入額を教えていただけますか。


添え状というには、いささか長文かも知れませんが、今は郵便法の問題を話そうというのではありません。

ここに至るまでに、メールと電話とで、何度もやり取りを交わしております。その最初に、今のご時世では、なかなか思うような価格にはならないと思いますと、念を押したつもりでした。それでよろしければ、どうぞお送りくださいと。

そもそも、一点ずつの評価額をお知らせするというようなことを、小店ではいたしておりません。しかし、この文面を見て、もう一度、現今の事情を縷々説明することの困難を感じました。

そこで説を屈して、30数冊一点ずつの評価明細をお出しすることにしたのです。次のような文と併せてFAXでお送りしました。

洋書は世界中の本屋との競合になります。外国の書店が競って安値で売り出しております結果、インターネットで検索いたしますと驚くような安い価格で本が見つかります。昔と違い、容易に手に入れられる本がほとんどです。
今回の本につきましても、一応全点調べさせていただきました。その上で、書籍の状態と、小店なりの価値判断を加味しての評価額です。ご満足はいただけませんでしょうが、ご理解願えれば幸いです。ご回答を待って、送金させていただきます。


RIMG1523ほどなく、お客様からお電話がありました。お声から、肩を落とされたご様子が目に浮かびます。それでもご納得いただき、まだ残っているので、また送らせてもらうというお言葉をいただいたのでした。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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