2016年11月23日

「献呈署名」

単に「署名本」といえば、signed by the authorの意味であることは古書の世界では常識ですが、「記名と署名の区別もつかない本屋がいる」と、以前お客様から苦言をちょうだいしたことがあります。

ある時、ご注文いただいた小店の本の状態説明に「署名あり」と書かれておりました。現品を確かめてみますと、著者とは無関係の名が書かれております。店のものが登録の際に、うっかり書き違えたようです。

その旨を返信いたしましたところ、了承したというお返事と共に、かつて署名本のつもりで頼んだある書店から記名本が送り付けられ、返品を申し入れたら逆切れされたとのご経験を、お伝えくださったのでした。

ちかごろでは「サイン入り」と表示する書店もあるようですが、どうも店主にはしっくりきません。

贈った相手の名も書かれている場合には、「献呈署名」と書くことになっております。宛名があるものを、嫌われる方もおられるからです。記名と異ならないというわけでしょう。

しかしその宛先が名のある方である場合、またそれは値打ちになります。ですからそういう時は「〇〇宛献呈署名」となります。差し障りのなさそうな場合に限りますが。

最も「献呈署名」が多いのは研究書の類で、これらは署名に値打ちがあることはほどんどありませんが、この場合も、一種の注意書きとして、洩らさず記載するようにしております。

KIMG0548こんな話をいたしましたのは、不思議な「献呈署名本」に出くわしたからです。今や重鎮となっておられる美術史学者のT先生。その45年も前のご著書です。

見返しに続く前扉にフランス語で献辞が書かれ、宛先としてフランスの美術史家の名前。そしてご自身の署名。

この本が、なぜ小店の手元にあるのか。どこで手に入れたのかさえ、どうしても思い出せないのですが、フランスに渡っていなければならないはずの本が、なぜ日本にあるのでしょう。追及するのも憚られるようです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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