2016年11月27日

福島いじめ

昨日の出版記念会で、もっぱら二人だけで話したという先輩は、福島の人です。南相馬市小高地区で農業を営んでいました。

原発事故のすぐあと、避難指示に従って取るものもとりあえず家を離れ、以後、5年間にわたって他所の土地で暮らすことを余儀なくされました。

今年の夏、避難指示が解除され、戻ろうと思えば戻れる状況になったのですが、生活のインフラが整っておらず、防犯面にも不安があるとのことで、二の足を踏んでいる家族も多いようです。

しかしインフラ整備と帰還者の増加はニワトリと卵。どちらが先と言っていたのでは、永久に町は甦りません。先輩も、戻る覚悟を固めていました。

ただ、戻るのは先輩ご夫婦と、90歳を超えるご母堂の3人だけ。事故前まで一緒に暮らしていたご長男の家族は、今年の春、茨城県に建てた新しい家で暮らすことになるそうです。

農地は地区でまとめて整備し、利用する意思のある人に使ってもらおうという計画だと聞きました。高齢化の問題に加え、食物の栽培は現実としてあきらめざるを得ないからと。

どれほど安全だと言っても、消費者は避難指示地域だったところの作物を選ぼうとしない。その断定に反論することは、店主には出来ませんでした。

それが研究者の道をあきらめて農家を継ぎ、半世紀近くを農民として過ごした先輩の、直面する状況です。全ては原発事故のもたらしたものです。

KIMG0565地震がなければ、津波がなければと悔やむことは詮無いことかもしれません。しかし原発がなければ、というのは悔やむ意味のあることだと思います。

「福島いじめ」があるという新聞記事を読みました。明らかな犯罪まで「いじめ」と呼ぶのは問題であるにしても、昨日の先輩の話を思い起こし、深く心を痛めました。

konoinfo at 18:30│Comments(0)TrackBack(0)

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