2017年05月30日

本屋の終わりかた

さて、私儀 五月末日をもち、閉店する事となりました

こんな文面の一枚のはがきが今日届きました。差出人は龍生書林の大場啓志さん。店を閉められるというお話は、前から伺っておりましたし、それが今月いっぱいということも先日、ご本人の口から聞いております。

ですから驚きはないのですが、あらためて感慨を禁じ得ません。また一人、一時代を築き上げたと言っても大げさでない、個性的な古本屋さんが舞台から去るということに。

眺めているだけで何かご利益が得られるかのように、いつも目の届く棚に置いて、そのため背がかなり焼けてしまった一冊の本を、久々取り出して開いて見ました。

mishima三島由紀夫 古本屋の書誌学』(ワイズ出版、1998年)。奥付の刊行年を見て、今度は本当に驚きました。山の上ホテルでの出版記念会が、もう20年も前のことだったとは。

著者と格別昵懇であったというほどではない店主が、このパーティーにお招きを受けたのは、どんなご縁からだったか、今となっては定かでありません。しかしその著作に圧倒された記憶だけは鮮明です。

龍生さんは店主の6歳年長。そして開業は店主の10年前。それだけの違いでしかありません。しかし古書店として成し得たことの差は、あまりにも大きい。この一冊の本からだけでも、それがはっきり分かります。

充分にやり遂げたというお気持ちがあるからこそ、ご自身の手で完全に店を閉じられるという決断にも至ったのでしょう。これもまた一つのお手本。ただしなかなか真似できない点では、ご著書と同じです。


konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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