2017年06月29日

並べ方が九割

河出書房の文藝別冊KAWADE夢ムックの一冊として『中井英夫:精神科医のことばと作法』が今年5月に出ています。

RIMG2002ご本人の著作をまともに読んだこともないくせに、手元にあるというだけでこれを時々開いて読んでおります。表紙に「入門決定版」という文字も見えますから、お許しいただくことにしましょう。

この本に転載されている「『治療文化論』あとがき」に、研究室の移動に伴う書籍の扱いについて書かれた部分があります。

……フロイトの著作の隣にはまちがってもユングではなくむろんアードラーでなく必ずアブラハムが来なければ気が狂う私である。引っ越しに際してファイリング・キャビネットの中こそ無事であるが、本の並び方が顧慮されることは決してない。そして私によれば本は並べ方が九割なのである。

続いて少し後に「本稿の校正を終える段階でも私の図書の約二割が整理されたにすぎない」とありますが、前後の文章から判断すると、新しい研究室に入られて3年や4年は経っている勘定です。

本の並べ方へのこだわりと、思うように整理する時間が取れない切なさが伝わってきます。

こんなを引用させていただいたのは、本屋にとっても並べ方の大切さは他人事でないからです。

もちろん研究者とは違った意味合いではありますが、どの書店もこだわりを持って、入荷した本をどの棚のどこに挿すか、毎日のように頭をひねっているのですから。

古本屋の引っ越しに、新旧店舗の棚に番号を振っておき、仲間を頼んで棚ごとに縛って番号絵符を付け、その番号に従って新しい店の棚に並べて行くという方法があります。中井先生にも、その手があったのではないでしょうか。

konoinfo at 19:30│Comments(0)TrackBack(0)

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