2017年07月10日

ある稀覯本の運命

本自体の真贋が問題になることは、滅多にありません。

ですから仮に萩原朔太郎『月に吠える』の無削除版が市場に現れたとしても、それが故買の恐れでもない限り、特にその来歴に頼る必要はないのです。

ただしその本に意味のある痕跡が遺されていれば、話は違ってきます。例えば自筆署名、献呈名、時には旧蔵者の書き入れなど。

ほとんどの場合、これらが偽筆であることは考えられません。しかしそれによって、高い付加価値のつく自筆本などには、紛い物が存在することも事実です。

三島由紀夫などは、偽の署名も多いと言われています。そうなるとやはり、その来歴が重要になってくるわけです。

今回の大市に出現した立原道造の二冊の詩集は、そのどちらにも献呈署名が入っておりました。朔太郎の無削除版にも劣らぬ稀覯本ですから、それが真正なものであるかどうかは、見た目以上の確証が欲しいところです。

店主の良く知る、稀覯本・自筆本専門店の店主から、この本の出品者が誰であるかという質問を受けました。

公開はされていませんが、秘密というほどのことでもありません。この場合は、双方にとって益のあることと考え、荷主の名を教えました。

すると「それで合点がいった」と、興味深い話をしてくれたのです。(つづく、たぶん)

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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