2017年07月12日

ある稀覯本の運命3

RIMG2033それにしても稀覯本店主は、なぜ「知られざるコレクター」がその本を「K書店から買った」と断じたのでしょう。

どうやらそれを裏付ける記録、ないしは伝聞が存在するらしいのです。その情報源については聞きそびれました。ただ献呈先から、かなり昔に何者かが、それをK書店に持ち込んだというところまでは確かなようです。

Kさんが、そのことを知っていた様子はありません。おそらく先々代の頃の話だと思われます。

当時から人気は高かった詩人ですが、今ほどの稀少価値は認められていなかった筈ですから、買い取った先々代は店頭に出し、ほどなく「知られざるコレクター」がそれを求めたのでしょう。

このコレクターの蒐集活動は、ほぼ戦前のことだと推測されます。だからこそ今に至るまで、これほどの本の所在が、知られざるままにあったわけです。もしこれらが事実だとすれば、何とも不思議な因縁というしかありません。

そのコレクションは、ご家族にさえ知られないまま、何十年も押入れの奥に眠っていたことになります。そしてもしKさんが「世界文学全集」と聞いて引取りを断れば、そのまま廃棄されてしまったことも充分考えられます。

落札価格にばかり目を奪われがちですが、ひとつ間違えば失われてしまったかもしれない稀覯本が、こうして市場に現れた経緯にこそ、祝福を送りたいと思います。

それはまた、この業界にひとつの励みを与えてくれるものでもあるのですから。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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