2018年04月06日

賢治の葉書

先月の圧倒的な大量出品はひと段落して、ふだんの明治古典会らしい量と質の市会でした。

その中で店主の興味を引いたのは、最終台に乗せられた出品物のうちの二点。一点は徳川家綱の黒印状。もう一点は宮澤賢治の葉書。

興味があったといっても、はじめから入札する気がないことはいつもの通りです。前者については、単に歴史的な文書として、どれくらいの価値があるのだろうかという関心。実は、思ったほどの落札価格ではありませんでした。

後者については何よりまず、本物なのだろうかという疑問。仮に本物なら、結構良い値段になるはずです。

KIMG0530他の同業も思いは同じらしく、午前中から何人もの業者が、小さな一枚の葉書を手にとって、表裏をためつすがめつしていましたが、筆跡だけで真贋を判定するのは、プロにも案外難しいことのようです。

そのうち、自筆物に詳しい神保町の先輩会員が、資料(ある展覧会の図録)に載っているかもしれないと考え、店の人にその図録を市場まで持ってこさせました。

先輩が言うには、載っていなければ本物の可能性が高い。手本がなければニセモノは作れない。

図録を追った結果、同じ宛名、同じ文面の葉書が見つかりました。本物は、まず流出していないはずですから、つまりこれはニセモノ。そこまで明らかになった以上、被害を未然に防ぐ措置が取られました。

それにしても、いつ頃、だれが、どんなつもりで作ったのでしょう。不思議な情熱があるものです。

konoinfo at 22:10│Comments(0)

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