2018年05月16日

幸運だろうか

古本業界に「今年の十大ニュース」というものがあるとしたら、まず間違いなくランクインすると思われる話を耳にしました。

かの高山宏氏が、蔵書の処分を始めたというのです。

それだけで十分ニュースではありますが、そのいきさつを聞くと、さらにいくつもの驚きがありました。

RIMG2828まず処分に踏み切られた理由。ほとんど視力を失ってしまわれたからとのこと。そして処分の方法。一件の古書店にすべて任せることにされたのですが、それが特に懇意な店だったわけではなかったらしいこと。

懇意もなにも、そもそもこれまでに、古本屋との付き合いは、まるでなかったということです。嘘かまことか、古本屋から本を買ったことがないとか。

そして極めつけの驚きは、3万冊とも称される膨大な蔵書を、一切無償で手放すとおっしゃっておられること。福の神に見込まれたような、この幸運な古書店さんも「譲り受けました」とご自身でツイートされておられます。

ここまで聞いて、何か胸にわだかまるものを、店主は感じました。羨望とか嫉妬とか、とは別の何かを。

蔵書を無償で放出される方は、たくさんおられます。友人知人やお弟子さんなどに差し上げたり、図書館に寄贈して、その残りの本を、引き取ってほしいとおっしゃる例も少なくありません。

さすがにそんな際には、持っていってくれれば良い、と言われることもあります。しかしそれでも、ある程度以上の利益が見込まれるなら、しかるべき対価を支払うことが商売人の矜持だと思ってきました。

それを要らないと言われたら、店主ならどうするだろうと考えさせられてしまったのです。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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