2018年09月11日

受難の書

昨日の話、言うまでもないことですが、決して作者を貶めようという意図はありません。ただせっかく古書や古書店を取り上げながら、もったいない気がしたのです。

この「本盗人」は『愛についてのデッサン』のなかの1編として1979年に刊行されています。作者の突然の死はその1年後。生前に、店主のような指摘が、ご自身の耳に届くことはなかったのでしょうか。

などと書いてから気になって調べてみたら、同書は2006年に、みすず書房《大人の本棚》の1冊として再刊されていました。これ以上は、その本を手に入れて読むことができるまでは、控えておいた方がよさそうです。

しかし野呂さんにとって、この文庫には、もうひとつ災難がありました。というのは、同書に収録された別の方の文章で、「野呂邦暢」にわざわざ「くにすず」とルビが振られていたのです。

誰の仕業かなどと詮索するつもりもありませんが、ご当人が生きておられたら、さぞ落胆されただろうと思います。

さて本日は洋書会の火曜日。先週のような極端な品薄は、どうにか繰り返さずに済みましたが、まだ多いとまでは言えない出品量。それでも面白い一口物があって、会もいくらか活気を取り戻したようでした。

しかしながら店主は、今日も入札見送り。店の状況さえ許せば、札を入れてみたいという出品も何点か目につきましたが、現在その余裕がありません。
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この場合の余裕は時間と場所。だからといって、もちろん、金銭に余裕があるというわけではありません。こういうのを蛇足と申しますか。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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