2018年09月17日

店主のオバハン

みたび、いや四度目でしょうか『素敵な活字中毒者』を取り上げます。

大岡昇平の「冬眠日記」と、殿山泰司「1978年(1月〜6月分)」という文章が続いていて、まるで対照的な内容ながら、それぞれに興味深く読みました。

対照的というのは、大岡さんはその題名のごとく、書斎に閉じこもりがちな生活のなか、好奇心のアンテナを張り巡らしての執筆。一方の殿山さんは、仕事柄もあって、移動先のエピソードも多い。

しかし、当時71歳の大岡さんが「中島みゆき悪くなし」と書かれ、「アバ」のLPを買ったりされているのに比べると、店主の方が老化の進みが早いような気がします。

殿山さんに至っては、ふたこと目には自らをジイチャンだとか、老残役者だとか蔑称するのですが、執筆当時63歳。そのエネルギッシュな生活ぶりは、ひとつも枯れたところが見られません。

などと、ついつい自分の年齢に引き比べて読んでしまう店主でありました。

RIMG3201その殿山さんに「伝法院通りの古本屋で見つけたハヤカワ・ミステリ」という字句がでてきます。すぐには気づかなかったのですが、この店はT堂さんに違いありません。

昭和30年刊定価2百円のものが8百円とありました。タカイじゃねえか、と店主のオバハンに文句をいったら、この本はなかなか出ないの、少ないからタカイのよ、と経済学の初歩みたいなことを教えてくれた、おおきにィ!!

悪態をついているように見えますが、早くにご主人をなくされた未亡人が店主であることを知っているほど、お馴染みだったということでしょう。オバハンというような年ではなかったはずですが、そこが殿山流ですか。

その息子さんとは、20年以上も前に、明治古典会で一緒に経営員をした仲です。店主よりはずっと若いのですが、いまでは立派に店主のオッチャンとなっております。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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