2018年10月06日

記名本が望ましい

「外国人が日本について書いたような本はありますか?」というお尋ねを受けました。

いわゆる日本関係というやつ。古いものから現在まで、洋書の世界では、一番確実に需要のあるところです。とりわけ明治から昭和前期にかけての旅行記、案内記の類は人気が高い。

というのは、市場で同業が入札するようすで分かります。小店でも僅かながら棚を設けていますので、見かければ一応は札を入れてみるのですが、まず歯が立ちません。

ですから目ぼしいところは売れてしまって補充が利かず、そろそろ棚を廃止しようかと考えている――そんな事情まで、お客様にお話しました。

すると今度は「古い教科書はありませんか?」とのお尋ねです。「古いというのはどれくらいの?」「戦前の旧制中学・高校あたりのものがあれば」

「残念ですが」そうお答えしたあと「もっと古い、明治期の語学教科書なら少しばかり」と申し上げると、「どこにありますか?」と棚を見渡されますので「それは裏にしまい込んでありまして、すぐには出せません」

eigoあまり愛想のない返事ばかりですから、少しサービスにと、先日市場で手に入れたばかりの『英吉利単語篇増訳』をご覧に入れました。かなり傷んでいますが明治4年の刊。珍しいものではあります。

eigo2お手に取って感心しておられましたが、巻末に毛筆で、旧蔵者の名前が大書してあるのを見つけると「こういうのが私の研究対象なのです」。

教科書が、どこで実際に使われたか、そうしたことを調べる上で、記名が重要な手がかりになるのだとか。「内容だけなら復刻やデジタルで間に合うのでしょうが」

確かにそれなら、現物が必要なわけです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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