2018年11月02日

胡蝶本

RIMG3281今日の明治古典会は出品点数も、量も少なめ。「古本まつり」の影響もあるのでしょうか。それでも3階、4階の2フロアを使っての開催でした。

最終台に並んだ中で、最も店主の目を惹いたのは胡蝶本の一口。日本近代文学史、いやむしろ近代出版史上に名を残す、籾山書店刊行による美装本のシリーズです。

背に美しく彩られた蝶の姿が印象的なため、その名で呼ばれているこの本のことは、ご存知の方も多いでしょう。

胡蝶本に詳しい先輩から、いろいろ話を伺うことができました。刊行されたのは全部で24点。今日出品されていたのは、その中の23点。ここまでの揃いは、近年、絶えて目にしなかったそうです。

ただ惜しむらくは、一見、状態が良さそうに見えて、長らく古書店の倉庫にしまいこまれていた間に、かなり紙魚にやられてしまっていたことです。

いわゆる虫損。函から本体を抜き出すと、表紙に小さな曲がりくねった溝が幾筋も見られ、一部は穴を穿って内部まで食い進んでおりました。

ざっと7割方にこうした被害が及び、無傷なのは6〜7冊でしたでしょうか。それでも案外良い落札価となったのは、もともとが美本だったからです。

先輩の話では何十年か前、極美本の揃いをお持ちのお客様に、500万円の買値を提示したのですが、お譲りいただけなかったとのこと。売り惜しんだのではなく、お金にするより、寄贈することを選ばれたのだそうです。

今回の23冊が、もし虫の被害を受けていなかったら、果たしてどれほどの落札価格になったでしょう。

konoinfo at 21:10│Comments(0)

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

12月31日から1月3日まで
休業いたします
Profile

河野書店

Archives