2018年11月21日

困りながら売る

tokyo半年以上も前に出た雑誌を話題にするなど、いかにも古本屋ですが、お客様から買い入れた中に、たまたまあった1冊。

『東京人』2018年4月号。特集「写真の力」とある表紙をめくると、見開きの目次頁に「古書店『日月堂』のコレクションを誌上公開!」――さっそく拝見いたしました。

日月堂の佐藤さんはメディアで取り上げられることの多い、いわゆる露出度の高い本屋さんの一人です。ご本人はいたって控えめな方なのですが、扱っているものとセンスが「絵になる」からでしょう。

この雑誌でも堂々12頁にわたって秘蔵の(でもないのかな)コレクションが掲載されておりました。

これを見ながら、とても自分には出来ない仕事だと感じつつ、ある一文を読んで、なぜ自分にできないかを豁然大悟いたしました。

とにかく面白くて飽きないので、売る気になれず困っています(笑)」という、ある写真帖に対する佐藤さんのコメントに答えがあります。

せっかく集めた貴重な資料も、手放さなければ、商売にはなりません。そこがコレクターと商売人の違うところで、手に入れることには熱心でも、それを手放す際には恬淡としている、いわばハンターのような資質が、この手の商いには向いていると思われます。

佐藤さんがそれだとは申しません。むしろ「自分が欲しい」を入札基準にされているような方ですから、ほとんどの在庫は本来「売る気になれ」ないもののはずです。しかし「売りたくない」を売ってこられたからこそ、いまに続いているわけです。

店主には、真似できそうもありません。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。

12月31日から1月3日まで
休業いたします
Profile

河野書店

Archives