2018年12月23日

『昏睡季節』

明古クリスマス特選市の話題をもう少し。

最終台に陳列された商品のなかでは、あの太宰治『晩年』(砂子屋書房、昭16)の帯付き初版本も目を惹きました。ヤケてはいましたが、保存状態としては並み以上。ある書店が廃業のため、倉庫整理をしていて出てきた一冊とのことです。

戦後すぐ、あるいはそれ以前から営業してきた古本屋なら、こうしたお宝が倉庫の奥から見つかることは、時おりあります。しかし店主が開業した時代以降では、そうしたことはまず望み薄。たとえこの先30年経っても、小店の塩漬け在庫が、お宝へと変化を遂げている可能性は、ほとんどないでしょう。

それはさておき、文学書ということでいえばさらに興味深い本がありました。吉岡實の詩集『昏睡季節』(昭15)。

この方面に疎い店主は、もちろん初めて目にする本でしたが、イタミこそ少ないものの、かなりの部分に水シミ、ムレが見られるような状態にもかかわらず最終台に置かれている――というその事実だけで、よほど珍しいものだと想像がつきました。

こわごわ手にして、ざっと目を通させてもらいましたが、あまりじっくり見るのがためらわれるようで、早々に本を閉じて傍らに置かれた1枚の紙片に目を移しました。

B5判程度のわら半紙のような茶色い紙に「手紙にかへて」と題して、詩集の成り立ちについて簡単な説明が加えられています。突然の召集を受けたのがきっかけで、書き溜めたものをまとめたとありました。

RIMG3359文中に「年老いた父母」というような表現があったので、この当時の詩人の年齢を考え、その父母は今の店主くらいかなどと、つまらないことが気になりました。

そのためか、結びに添えられた「疲れてよく眠ります父母の枕ちかくに」という一行が、妙に心に残ったのです。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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