2019年06月24日

キートン朔太郎

少し前の明治古典会で何度目か『月に吠える』の感情詩社版が高値で落札されるのを見て、それがきっかけになったかもしれません。

つい最近、お客様からお売りいただいた本の中に『父・萩原朔太郎』(萩原葉子)の初版本があったのを思い出し、それを見つけ出して読み始めました。

この本、ずいぶん昔から身辺で見かけた記憶があるのは、もしかしたら家人の蔵書にあったのかもしれません。あるいは商売を始めてから、手に入ったことがあったのか。

いずれにせよこれまでは、とくに読む気も起りませんでした。しかし、先日の削除版はともかく、無削除版ならば、おそらく近代詩集として最高の価格がつくような詩人について、いわば職業上の興味を抱いた次第です。

RIMG3739もうひとつ、別の関心もありました。それは朔太郎後半生の住まいが、店からさほど遠くない世田谷代田のあたりだと聞いたことがあり、もう少し詳しく知りたいと思ったのです。

しかし読んでみて伝わってきたのは、幸福とは言えない家庭の姿と、そこに育った娘の不思議な感性でした。室生犀星のあとがきが、とても含みを持って印象に残っております。

作中の朔太郎およびその友人知人に対する描写は、それなりに興味深いものでしたが、家族の問題は、その描き方も含めて、店主の趣味とは遠いものでした。

ただ一か所、思わず笑ってしまったところがあります。近所の悪童が、朔太郎を見て「バスター・キートンみたいだ」と言ったとか。これには唸りました。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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