2019年08月09日

怪我の功名

先の七夕大入札会に『尾崎翠書簡』なるものが出品されました。正確に言うと、出品されようとしました。

入札会目録が発行され、広く配布されたあと、いよいよ公開下見が始まるという時になって、目録をご覧になったある研究者の方から、それが不正流出品の恐れがあるという指摘を受けました。

詳しい事情をお知りになりたい方は、Googleなどで検索していただければ、いくつか関連記事が見つかると思いますが、確かに8年ばかり前にも、古書組合宛に注意喚起のお知らせをいただいた記録が残っておりました。

入札会での売買にふさわしいものとはいえず、出品はとりやめ、出品業者にお返しいたしました。業者もまた、現所有者から預かったもののようでした。

RIMG3877会として対応できるのはそこまででしたが、後日、その研究者の方からご連絡があり、なんとか書簡を本来の持ち主に返したいというご相談を受けました。有償でも構わないとのこと。

そこで間を取り持った結果、つい最近、金額的な折り合いもついて、元の持ち主の手にその書簡が戻ることになったのです。

誰もが納得できる決着とはいえないかもしれません。しかし持ち主にとっては、その書簡が再び闇に隠れ、二度と現れないことの方をより恐れたのでした。

もし明治古典会に8年前の通告を記憶しているものがいて、目録編集段階で出品が拒否されていたら、それはそれで見識ある対応だったでしょう。

ただしその場合、元の持ち主に返ることは永久になかったかもしれない。などと考えたりもしました。

konoinfo at 22:47│Comments(0)

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