2019年08月17日

敗戦のころ

先日引用した朝比奈隆さんの「負けるとは思わなんだ」というひと言。実はそもそも、この言葉から衝撃を受けたのが、その対談を紹介しようと思ったきっかけでした。

既に敗色濃厚であったはずの昭和20年5月の時点で、それは普通の感覚だったのでしょうか。それとも朝比奈さん、特別に暢気な方だったのでしょうか。

そのあっけらかんとした語り口から、しばらくは暢気説のほうに傾いておりました。

しかしふと気になって山田風太郎『戦中派不戦日記』(講談社文庫、2002年)を拾い読みしていくと、8月10日の部分にこんな文章を見つけました。

〇日本人の大部分は、理性的にはこの戦争は勝てまいと考えている。しかし感情的には、まさか負けやしないだろうとまだ考えている。

これは決して自分を高みにおいて、世間一般を評した言葉ではありません。自分自身もその大部分の一人だとして、さらに考察を進めていく部分です。

朝比奈さんも、戦争の形勢が良くないくらいは理解されていたのでしょう。それでも「まさか負けやしない」と思っていたのは、必ずしも暢気だったからではなかった。大部分の人にとっては、負けるということが本当に想像できなかったのでしょう。

watanabeそれに対して、大部分とは異なる意識を持って当時を生きた人のことが気になり『渡辺一夫 敗戦日記』を拾い読みしました。

そこから伝わってきたのは、狂気の時代に正気を保つことの苦しさでした。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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