2019年09月11日

『追放者たち』

「レッドパージ」という言葉は、子供のころにも耳にする機会があり、何となく知ってはおりました。

しかしハリウッドのいわゆる「赤狩り」ほどには、その実態について無知なまま今日に至っております。

これは米国のマッカーシー旋風と呼ばれるものが、劇場型の効果を狙ったものであったため、今日でもその査問の様子がフィルムなどで流れることもあるのに比べ、日本の場合はもっぱら組合活動をターゲットとしたので、労働争議としてしか世に認知されなかったからのようです。

redそのことを新藤兼人『追放者たち』岩波同時代ライブラリー版(1996年)巻末の「解説対談」を読んで知ることになりました。

この本は、新藤さんが近代映画協会で苦楽を共にした、黒田清己カメラマンの葬儀の場面から始まります。練達のシナリオライターだけに、映画のシーンを思わせるように話が進み、時代の犠牲者とでも言うべき人々の存在が明らかになっていきます。

初版は1983年。レッドパージから30年余という時点での出版ですが、わが身に当てはめると開業から現在までの時間とほぼ同じ長さ。

しかしながら店主のように、のんべんだらりと生きて来たものの30年とは、比べものにならないほど辛く長い日々であったに違いありません。

ある思想を敵視し、その同調者まで排除しようとする社会の恐ろしさは、現在にも通じるものです。権力がそれに加担すると、理不尽も横行します。背筋が寒くなるような思いもさせられた読書でした。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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