2020年01月06日

推理してみる

昨日ご紹介した『本を愛しすぎた男』に、気になる箇所がありました。

最後に彼女は、自分の好きなタイプの本——手沢本を見せてくれた。そのうちの何冊かはレズビアン作家の恋人への献呈本だった。

彼女というのは、著者が知り合ったあるコレクター。この「手沢本」には「しゅたくぼん」とルビが振られ、訳注までつけられています。

訳注は、次のように極めてまともなもの。

学者や文学者などの旧蔵者が繰り返し読み、手のつやがついた本。あるいは書き込みのある本。

RIMG4061しかしここで語られているのは、作家の献辞入り署名本ではあっても、書き込みなどをした本というわけではなさそうです。一体原文では、どんな語句が使われていたのでしょう。

そもそも「手沢本」に対応する英語はあるのでしょうか。研究社和英大辞典(第4版)には立項されていて、a book from the library of / an association copy などと訳されていますが、原文に用いられていたとは思えません。

この際、原書を取り寄せて確かめようかとAbeBooksで検索してみると、最安値は108円、ただし送料を入れると2200円ほどになるようです。

しかも It may be marked, have identifying markings on it, or show other signs of previous use.つまり旧蔵者が何かしら書き入れた本でした。

これを「手沢本」と呼べるかどうかは、誰の手かによるわけです。

konoinfo at 19:30│Comments(0)

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