2020年06月18日

幻の第2巻

『ハロルド・ピンター戯曲選集』(竹内書店)という本があります。店主にとっては懐かしい本。というわけは、学生時代には、とても手の出ない高嶺の花だったからです。

ちなみに手元にあるのは、その第1巻で1970年刊行、定価は1500円と表示されています。当時、京都の学生下宿の相場が一畳千円程度と言われていました。4畳半なら家賃が月に4500円前後というわけ。

風呂もトイレもないような下宿の家賃ではありますが、それに比べても本の値段が高いことが分かります。

IMG_20200617_170128もっともこの本は650頁近い厚冊。その3年前に出ている『ベケット戯曲選集』(白水社)の第1巻は、約半分ほどの頁数で定価850円ですから、特別高い本だったとは言えません。部数の出ない戯曲集としては、それが相場だったのでしょう。

値段の話がしたかったわけではありません。このピンター戯曲選集、店主は五十年この方、第1巻しか目にしたことがないのです。それでいろいろ調べてみて、どうやらそれしか出なかったようだと結論づけておりました。

ところが昨日『日本の古本屋』で、2冊揃として出品されているものを見つけました。よく知っている若手の同業です。驚いて注文を入れたことは申すまでもありません。

すると夜のうちに「在庫切れお詫び」のメールが入っておりました。ご丁寧に「一昨日売れました」というメッセージまでついて。

本当に存在したのでしょうか。店主はもう一度、国会図書館やCiNiiで調べてみましたが、どこにも第2巻の情報はありません。竹内書店は当時、2巻組の戯曲選集を何点か出しているので、そのどれかと紛れてしまったのではないか、というのが今になっての店主の推理です。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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