2020年08月19日

見事な店仕舞

昨日、市場から戻ったあと、意を決して同業大先輩の通夜に行ってまいりました。

業界では紛れもない、巨人のお一人でした。大きな店を構えておられたわけではありません。質の高い目録を出しておられましたが、知る人ぞ知るという性格のものでした。

そんなわけで、世間的に知名度の高い古書店ではなかったかもしれません。ご本人もそれを望まないようなところがありました。外部に向けてどころか、古書月報にさえ、文章を載せることを好まれませんでしたから。

しかし市場などでは、若い同業を相手に、惜しげもなく蘊蓄を語られる姿を良く拝見しましたし、店主もご自身の若い頃のお話、全国をセドリに廻ったことなどを、親しく伺った記憶があります。

そんな私たちでさえ、その巨人ぶりを真に知らされたのは最晩年になってからのことでした。後継の話がなくなったのか、ご自身で店仕舞いを思い立たれたのです。

それまでも手持ちの在庫を少しずつ市場に出したりしておられましたが、ある年から倉庫の整理を始められ、以後数年間にわたって、その膨大な在庫を東京古典会、明治古典会を中心に出品され続けました。

RIMG4442それが毎回、予想以上の高値となったことで、量ばかりでなく、その質の高さにもあらためて驚かされたというわけです。

全ての整理を終えられ、組合を脱退されたのは昨年のことでした。そのため今回の訃報は組合員に流されることはなく、両古典会の会員ほか、親しかった同業に限られた模様です。

96歳の、見事な店仕舞いであったと思います。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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