2020年09月17日

自筆物の扱い

岩波の『図書』——といっても最近の号ではありません。店の裏に積まれた本の山の一番上に、なぜか1980年6月号が置かれていました。片付け物をしているうちに、偶然そうなったようです。

その号は「野上弥生子特集号」で、いつ手に入ったものか覚えていませんが、店に出すほどには思えず、かといって捨ててしまうのも惜しい気がして、そこいらに積んでおいたものです。
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その時にもざっと目を通しているはずですが、あらためて冒頭の「午後の対話」と題された、大岡信との対談を読みました。

大岡と同い年だという谷川俊太郎さんを、「俊ちゃんなんて赤ん坊からですからね」と子ども扱いする野上は、確かめてみると1885年生まれ。つまりこの対談の時、95歳だったことになります。

ちなみに亡くなられたのは1985年、あと1か月余で百歳の誕生日を迎えるところでした。

それで思い出したのは、何年か前、野上の旧宅から出たという蔵書類が、明治古典会に現れたことです。

没後30年ほども経つわけですから、初めての整理ではありません。すでに関係者によって、重要なものは、しかるべきところに納められた後のものです。自筆物にめぼしいものはありませんでしたが、旧蔵書というだけで、多くの札が入っていた記憶があります。

その自筆物です。欧米では古書店の扱い品目として、しっかりした位置づけがなされているのですが、わが国の場合、とくに近年のものについては、権利関係をめぐって日陰者扱いされることが増えています。

市場で売買されたということが、正当な取引の証左として認められるように、日ごろからその取扱いには、十分な注意を払う必要があるでしょう。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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