2020年11月12日

捏造された記憶

昔のことなどほとんど覚えていないのに、妙にくっきりと記憶に残っている出来事があります。

もう45年ほども前のことになりますが、古本屋になるために、まずとこかの店員になりたいと考えた店主は、古書組合なるものの存在を知り、そこを尋ねて事務局長に働き口の紹介を依頼し、履歴書を預けました。

今にして思えば、八十島さん(当時の事務局長)もさぞ面食らわれたことでしょう。

待つこと一年、なんの音沙汰もないため古書会館を再訪すると、その場で山陽堂書店を紹介されたものの、尋ねてみればすでに一人採用した後ということで、見合わせを告げられました。

そこに現れた豊田書房の古賀さんが、五十嵐書店の名を出したのです。今日の話はそこから。

店主の頭の中では、その足で、早稲田に向かったことになっていました。すぐには店が見つからず、途中の本屋さんで尋ねた、それが浅川書店さんだったという場面記憶が鮮明だからです。

ところが最近、家の片付けをしているうちに、古い書類束のなかから、B5サイズの紙片が1枚見つかりました。

その紙には高田馬場駅から五十嵐書店までの道順(といっても一本ですが)を示した簡単な地図と、学バスに乗り一つ目の停留所で降りて100mほど歩く、というメモが書かれていました。
RIMG4551
いつどなたが書いてくださったにせよ、この地図があるということは、店主の記憶は全くの間違いで、日を改めて五十嵐さんに伺ったことになります。

冷静に考えれば、当然のことです。勤めを頼むのに、そんな唐突な訪問では失礼ですから、事前に連絡して面接日を決めているはずです。

どこでどう記憶が捏造されたのか、いつの間にやら勝手なストーリーが出来上がっておりました。

世に自伝というものは数多ありますが、中には店主のような、捏造記憶も交じっているのではないでしょうか。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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河野書店

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