2021年03月28日

不思議な名古屋弁

方言を文字で表記するのは、難しいことだと思います。

まず第一に、高低アクセントや、イントネーションは表しようがありません。特別な符号でもあみ出せば別でしょうが。いわゆる訛りについても、正確に五十音の範囲で再現することは不可能に近いのではないでしょうか。

そうした点を重々承知の上で、やはり奇妙に思われる名古屋弁表記を目にしました。

nagoya先日お引き取りした研究者旧蔵書の中にあった1冊——『日本語を作った男 上田万年とその時代』(山口謡司 集英社インターナショナル 2016年)がそれで、装丁が先日亡くなられた平野甲賀さん。

その訃報を聞いて家人が帳場の前に置きましたので、つい手に取って読んでみたところ、初めの方にその名古屋弁が現れたのでした。

上田万年は名古屋藩の下屋敷で生まれ、「おそらく父母は『上町言葉』を使っていたのであろう」として、次のような会話が例として出されています。

「こんなところでなんでござりまするに、ちょこっとそこまでおあがりおそばいてちょうであーいあすばせ」
「ありがとうござりまする。……やっとかめで、江戸へ出てまあーりましたものだで、ひょっとしたらお目にかかれたらと存じまして、寄らせていただきましただけでござあーいますもんだで」


ちなみに「上町言葉」は武家の使う上品なもので、「現在の熱田区辺り」の庶民の言葉というのも例示されているのですが、熱田区の庶民として育った店主が読んでも、いまひとつピンときませんでした。

名古屋弁と言えば、現市長が喋っているのは決して上品な部類ではなさそうです。もっとも彼の場合、訛りではなく喋っている内容の方に問題があるようですが。

konoinfo at 18:30│Comments(0)

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