2024年10月09日

初版本の価値

suityo念ずれば通ず、と言うほど大げさなものではありませんが、10日ばかり前に小ブログで表題だけご紹介した「水鳥荘文庫目録」なるものが手に入りました。ただし「第二版」と表紙に印刷されております。

早速開いてみると、まず目に飛び込んできたのは4頁にわたる口絵のカラー写真。二束三文と謙遜されたなかでは、ご自慢の蔵書でしょうか。古刊本、初版本など30点近くが収められています。

扉に続いて「水鳥荘文庫目録第二版序」。ここでも諧謔味にあふれた漢文調で経緯が記され、2015年には脱稿したものの、さらに3年後の2018年に刊行されるまでの事情が書かれていました。

続く「第二版凡例」には以下のような一項。

初版の凡例に「市場の古書カタログをもってこの目録にある所の値を高下すること勿れ。売るとならば二足(ママ)三文なり」と自嘲せしが、事情は10年を隔てていっそう酷烈。あはれを極む。捨てなむ、棄てなむ。一切の書冊消散せし後、目録またその編纂の意義あるか。

そんなシニカルな文章がある一方、巻末の「フランス古書懐古」においては「初版本の蒐集について」と題した一章で、「あたかも李朝の壺を撫で楽しむ具合に愛玩するようなもので、本来の研究者の態度ではない、と考えていた」ご当人が、少しずつ初版本を集めるようになった理由も説かれています。

フランスに留学させてもらい、初版本にしばしば触れる機会ができて、それが単に骨董的な価値だけでなく、上にも述べたように、読み方さえ知れば、貴重なテクスト上の情報を満載したものであることがしみじみ実感されるようになった。私は研究の素人だったのである。

これは初版刊行以前に書かれた文であるわけですが、今でも訂正の必要は感じておられないと思います。

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2024年10月08日

仕分けの大切さ

東京資料会の大市で、一週お休みしたあとの洋書会。

こういう時、まったく出品が集まらないことも過去に何度かありました。そのため、たとえ僅かでもと、ダンボール2箱の本を先週末に送っております。

心配は杞憂に終わり、本日の出品は合わせるとカーゴ4台以上。おかげで何とか恰好がつきました。ただし一点ものは少なく、4本口から10本口まで、そのほとんどが大山。出品量に比べると、出品点数は少なく、市会は早めに終了いたしました。

DSC_2845人気のある一口なら、大山でも札が入ります。いやむしろ、狙って大山にすることもあるくらい。しかし残念ながら今日の口は、そういうものではありませんでした。とくにカーゴ2台ほどの、ラテン・アメリカ文学関係の口。

出品者ご自身が、何点かの大山に分け、封筒をつけて出品されました。その結果どの山も、札が入ってもせいぜい2枚。競合が起こらず、ほぼ下札で落札されています。

もともとスペイン語を扱う本屋は多くありません。それでも仕分け方次第では、もっと札を競わせることができた気もします。かくいう店主も、大山のあちこちに数冊ずつ欲しい本を見つけても、その量に怯んで札を入れることができませんでした。

交換会の仕分けが有料化されたのは、十年ほど前からでしょうか。洋書会の場合、本当は無料ででもお任せいただきたいところですが、諸般の事情からそうもいかず、他会より割安でお引き受けしています。

それだけに今回のような場合、いささか複雑な気持ちが残るのです。

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2024年10月07日

「洋書まつり」準備中

さて来週末は、いよいよ「洋書まつり」です。かつてないほど時間をかけて準備を進めてきたのですが、今になって大きな不安に襲われております。

それは今回、出品の相当部分を占めるのが、先日来お持ち込みいただいているM先生のご蔵書で、しかもそのほとんどが、ご専門に関した書籍だからです。

ご専門はフランス文献学。ここでお名前を申し上げなくとも、当日小店の本を手にとってご覧いただければ、分かる方にはいずれお分かりになることだと存じます。

DSC_2837もちろん文学、歴史、語学といった分野にまたがりますが、中心はフランス中世。どうしても偏りがあるかもしれません。

数年前、ジョイス研究書を大量に並べて、ほとんど討ち死に状態だったことが思い出されます。それに比べれば、もう少し広い範囲の方にご興味を持っていただけるはず。ご専門の近い方には、ぜひ足をお運びいただきたいと願っております。

その他に並べる予定のもので、ある程度まとまった量があるのは、シェイクスピア関係、トーマス・マン関係、映画芸術関係などなど。いずれも格安値段を付けました。

準備が進み過ぎて、いつもより量が多くなっている気もしております。並べの際にパニックにならないよう、今週中にしっかり全体量を把握しておかねばなりません。

火曜日と金曜日は市場に出かけるため、残された日数はあとわずか。それでも最初に申しあげたとおり今までになく、準備に多くの時間を費やしてきました。

それだけに、心配も大きいわけです。

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2024年10月06日

重なるご注文

先日、ある本を「日本の古本屋」に出品したところ、1時間と経たないうちにご注文が入りました。

ある程度予想はしていました。Amazonでは、サイトの規制に引っかからないのが不思議なほどの、べらぼうな値段で出品されている本ですから。

店主が出品した価格は定価の約2倍。「日本の古本屋」でも、もっと高く売れた実績があったようですが、それが店主の相場感覚。とはいえ、これほどすぐ売れると、多少もったいない気がしないでもありませんでした。

しかもその夜、別の方から「探究書登録し、今週の在庫メールを拝見してすぐサイトを見たものの、既に在庫切れで残念でした」というメールまで届いたのです。

もっとも販売価格はご覧になっていないようですから、小店が出品した値段で、すぐご注文いただけたかどうかは分かりませんが。

DSC_2830一方、こちらは出品してすでに半年近くになる、ある外国語辞典の話。今朝方、お電話で問い合わせをいただきました。在庫している旨お答えすると「午後に伺います」とのこと。

お言葉どおり、午後2時過ぎにはご来店になり、ご確認の上お買い上げくださいました。

すると夕方、同じ本にクレジット決済のご注文メールが入ったのです。研究書や文学書なら、なにかの事情でご注文が重なることもありそうで、実際過去にも何度か経験しております。しかし外国語辞書では珍しい。お知り合いではないかと思ったほどです。

いずれにせよ、売れた時点ですぐに処理をしなかったのは店主のミス。丁重に、在庫切れのお詫びメールをお出ししたのでした。

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2024年10月05日

駒場の話題

午前中、床屋さんに行きました。朝一番の競合を避け、少しずらして出向くとうまい具合に先客はおらず、すぐ散髪してもらうことができました。

マスターから最近のトピックとして、近々「アド街ック天国」で駒場が取り上げられるのではないかというお話。先週あたり、あちこち取材や撮影をしていたらしく「そちらには来ませんでしたか?」とお尋ねを受けました。

あいにく、というか有りがたいことに、小店にはなんのお声掛かりもなし。聞けば20年ほど前にも一度、駒場を取り上げているそうですが、当時も無縁でしたから、何の記憶もありません。

店主からは最近できたスコーンの店を話題にすると、それに応えるように、昔あった色々な店の話をマスターが話してくれ、しばらくは駒場商店街の今昔物語。

マクドナルドの跡地が目下建設中で、ここに地階が作られていることから、郵便局の先に、かつてレコード店があったという話に。

DSC_2829店主には初耳でしたが、半地下のような場所のため、ある時の豪雨で浸水し、大きな被害を受けたといいます。それが撤退の理由となったかどうか、その後に入ったのは靴屋さん。こちらの店はよく覚えております。

帰り際、現在TVCMで流されている「キリン一番搾り」の広告は、駒場で撮ったものだと教わりました。我が家は誰もTVを見ませんので、気がつきようもありません。店に戻って家人に話すと、早速ネットを検索して、その動画を発見。

短いカットのそれぞれが、どこだか良く分かります。数十秒の映像に、3日間かけて撮っていたという話でした。

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2024年10月04日

一大コレクション

眺めているだけでも——と言ってもいつもそうですが、十分に興味深い今日の明治古典会でした。

明治古典会通信メールの出品抄に「映画・芸能関連雑誌・ポスターの口 6カーゴ」とあった一口が、本日出品の目玉。実際の量以上に、会場における存在感は大きく、ほぼ半ばが、その口で占められていたようにさえ見えました。

実際に終わってみて、出来高で見ると、やはり全体の半分ほどになったのではないでしょうか。店主の勝手な推測に過ぎませんが。

出品抄に先立つ速報には、その内容の一部が次のように記されていました。

映画芸能関連雑誌・ポスターの口、絶賛仕分け中!!! 雑誌/蒲田・富士・下加茂・近代映画・松竹・日活・明星・平凡etc ポスター/七人の侍・野良犬・浮雲・鋼鉄の巨人・鉄腕アトムetc

会場を回ると、質も量も、空前の一大コレクションであることが段々に分かってきます。専門業者たちさえ初めて見るような雑誌も多数。知られてはいても稀少な諸雑誌も、大半が良い保存状態。

ポスター類も折れ筋どころか、鋲止めの痕さえなく、どのようにして手に入れられたのか不思議なほど。不思議と言えば、それほどのコレクターなのに、その方についての情報がほとんどないことのほうが、もっと不思議です。

DSC_2826通常、これほどのコレクターなら、どこかしらの専門店のお得意さんであっていいはずです。しかし今日のコレクション旧蔵者については、店主の聞いた限り、取引のあった業者はいなかったようでした。

しかしそんな詮索は無用とばかり、最終台に置かれた数百冊の大正・昭和の映画雑誌一括などは、数百万円の値で落札されております。

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2024年10月03日

駒場新店舗情報

wagon先日から気にかかっていた、ご近所で開店準備中だったお店、その正体がやっと明らかになりました。店主の予想はあたらずとも遠からず。いや実際はかなり遠かったのですが。

珈琲店ではなく焼き菓子のお店、しかもお店というより工場という方が近いかもしれません。小さな売り場はあるのですが、週に二日ほど開けるだけとか。メインターゲットはネットによるオンライン販売のようです。

もともとは「珈琲日記」というお店を出されていた方が、ご自身の店舗営業はやめてプロデュースを本業に。その際、店で出されていた焼き菓子類を、新しいブランド名で製造販売することを計画されたと、これはクラウドファンディングのサイトで得た情報。

新しい店の名は「MAATle(マートル)」。資金の集まり具合からして、かなり好調な出だしと見受けられます。店主が知らないだけで、もともと多くのファンを持っておられたお店だったのでしょう。

そんな有望店が近隣に誕生するのは嬉しいことではありますが、看板の控えめなことと言い、あまり集客には熱を入れておられない様子。毎日その前を通る店主でさえ、今日まで何ができるのか知らなかったほどですから。

しかしそれは駒場という立地をよく考えられた、かなり的確な戦略なのかもしれません。すぐお隣には、5年ほど前から店を開かれているTIRAMISU HOME MADEという生ティラミスの専門店があります。失礼ながらあまり人だかりしている様子は見受けませんが、オンライン販売を主力として、順調に営業されているようです。

かく言う河野書店も人だかりとは無縁のままできました。いまではネット売り上げが、店売り上げを上回っております。ただし店の広さは両店の何倍か。店賃も当然それに比して高い。小店の場合は、倉庫だと割り切るわけにはいかない事情があるのです。

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2024年10月02日

法令講習会

しばらく前に、茶色の封筒に小さな文字の宛名ラベルが貼られた郵便物が届いていました。

一瞥しただけで、おそらく古物講習にかんする報せだろうと判断し、しばらく放置しておいたのですが、いざ中身を確かめてみようと思った時、その封書が見当たりません。

そうなると、いささか不安になりました。以前なら、協力会費の振替用紙が同封されていて、任意ではありましたが、欠かさず払ってきております。生活安全課か防犯協力会に電話して、どんな書類を送られたか、問い合わせようかとも考えました。

DSC_2824しかし幸いなことに、洋書まつり用の山を動かしているうち、ある本の下からひょっこり現れたのです。今度はすぐに開封して、入っていたA4一枚の文面を読みました。

予想どおり講習会の案内です。振替用紙は入っておりません。何年か前、コロナ禍で講習会が中止されて、たしかその頃から、協力会費の徴収もなくなっていたように思います。あるいはそれが復活したのでは、とも思ったのでしたが。

じつはそれ以前から、店主はなかなか講習会に出ることができませんでした。ちょうど即売展のスケジュールと重なることが多かったからです。

ひさびさ出席してみたいと思い、開催日時を見ると10月17日。案の定、洋書まつりの並べの日です。今年も断念せざるを得ません。

以前は葉書も同封されていて、出欠を返信するようになっていたはずです。今は「受講を希望する方」が、電話で申し込みする仕組み。欠席理由を書いて葉書を投函していた時代とは、色々な面で変わったようです。

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2024年10月01日

『人とともに 本とともに』

「水鳥荘文庫目録由来」という見出しを目次に見つけ、読んでみました。

タイトルは朝日出版社から2008年に出版された『人とともに 本とともに』。著者は仏文学者で大阪大学名誉教授の柏木隆雄さん。

「水鳥荘」は柏木さんが名付けられたご自身の文庫名で、その由来も書かれています。

DSC_2822水鳥は、すなはち「三水」に「酉」にて「酒」の謂となり、さらに酔凋、酔嘲に通じ、また「見ず取り」ともなって、読みもせず、ひたすら買ふに奔る主人の性を表はすのみ。

ご覧のとおりの擬古文体で、ご自身の読書、購書遍歴を面白おかしく語られており、目録は「忝き文部省科学研究助成金を得しを幸ひ大学院諸生を煩わせ」お作りになったものだそうです。

その目録を拝見しておりませんから、何とも申し上げようがないのですが、ご自身ではいわゆる善本、稀書を集めたものでないと控えめなご説明。

ことのついでに申さば、市場の古書カタログの売価をもってこの目録にある書の値を高下すること勿れ。売るとならば二束三文なり。

買うときにもよく値切ったりした「廉価の本」ばかりで、愛書家の目からすれば「垂涎措くあたはざるものほとんどなし」と、どこまでも謙虚です。

しかし根っからの本好き古本屋好きであられることは、ご自身が通われた大阪の古書店を、短い言葉で描写された筆致からも、うかがい知ることができます。

以前からのお知り合いのような、とても親しい気分にさせられたのでした。

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2024年09月30日

明日から値上がり

平日を担当されている日本郵便の集荷員さんは、午後2時半頃に来られます。もう少し遅い方が有難いのですが、勝手は申せません。

今日もいつも通りの時間で集荷していかれました。ふと気がついたのは、もう「日本の古本屋」の配送料金設定を変えてもいいだろうということです。これより後に入るご注文は、明日以降の発送になりますから。

在庫管理システム(ZIZAI)を開いて、レターパックプラスの料金を520円から600円に、ライトのほうは370円を430円に設定変更しました。これで小店の商品には、新しい送料が表示されることになります。

DSC_2801と、その画面を閉じたところで、1件の即決注文が入っているのに気がつきました。発送方法はレターパックプラス。送料520円で決済されています。変更する直前に、ご注文いただいたのでしょう。

月曜日の今日は、午後からパートのI夫人がおられるので、荷造りさえすれば郵便局まで出しに行くことができます。やりかけの仕事を中断してレターパックを作りました。自転車でひとっ走り、局へ持ち込み、みすみす80円を失うことを免れたのです。

じつはこのご注文品、ほんの1時間ほど前に出品したばかりでした。お客様にとっては、幾重にも間の良いことだったわけです。

ところで現在、クレジットの決済がないまま3日ほど経つご注文が1件だけあります。こちらもレターパックプラス利用品。つまりこれからご決済いただいても、80円の不足となるわけです。

決済メールを出し直そうかとも考えましたが、今回はこのまま太っ腹に、お待ちしようと思っております。

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12月31日から1月3日まで
休業いたします
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