2026年09月07日

おおスザンナ

「ジョン万次郎は、故郷へ帰る四国の峠を『おおスザンナ』を唄いながら歩いて越えた」

DSC_4450そう話してくれたのは、昨日小店に現れ、店先の椅子に掛けてまさに久闊を叙した、『漂巽紀略』の現代語訳者である旧友。

そんな彼の口から出た言葉ですから、相当にトリヴィアな話題だろうと感心して聞いたのですが、あとで調べてみるとWikipediaあたりにも出てくる、ある程度知られた話ではあったようです。

もちろん歌いながら峠を越えたという話ではなく、フォスターのこの曲を、日本にもたらした人物として取り上げられているのですが。

友人によれば、ペリーの来航時に楽隊が演奏した10曲中8曲が、フォスターの曲だったといいます。同時代のヒットポップとして、ジョン万次郎も愛誦していたのでしょう。

当然ながらジョン万は英語で歌っていたわけですが、店主は今でも日本語の歌詞をそらんじています。といっても一番だけですが。

思い出は中学生時代に遡ります。新一年生の春先、音楽の時間に、先生からいきなり指名を受け、教科書に載っていた、その曲を歌う羽目になったのです。無論アカペラで。

小学生のころの店主は、なにが苦手と言って、音楽の歌のテストほど嫌なものはありませんでした。今から思えば声変わりの時期でもあったからでしょう。なんとか辞退しようと抵抗したのですが、許してもらえません。

意を決めてともかく歌い終えると、意外なことに先生からいただいたのはお褒めの言葉。それが店主の苦手意識を消し去ってくれたきっかけになったと、今でも思っています。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月06日

土のうを積む

朝から、というよりその前から、今日明日は東京地方も大雨になるという予報が出されていました。

今朝のNHKラジオを聞いていても、今夜から明日にかけては「猛烈な雨」が降る恐れがあると言います。朝食をとりながら、家族の意見は「土のうを積んだ方がいい」ということで衆議一決しました。

つまり今日、店を閉める際に、入り口に土のうを積んでおくべきだというわけです。「何もなければそれでいいのだから」と末娘。

店主も反対するつもりはありません。今朝、店に着くと、「小降りのうちに」と言って家人が、近くの土のう置き場から、数袋を台車で運んできました。

さて日中はたいした降りでもなく、しかしお出かけ気分にもなれなかったのでしょう、日曜日というのにさっぱりの人出でした。

DSC_4453 (1)一方、天気予報のサイトで何度か確かめると、そのたびに想定雨量は下方修正されています。とはいえ、せっかく用意したのですから、店を閉めたあと、ドアの前に土のうを積みました。動画も参考にして。

娘の言うように、空騒ぎで終われば、それはそれで「めでたしめでたし」なわけです。ひとまず、やるだけのことはやって家に帰りました。

ところでこの警戒心は、どこから生まれているかというと、2014年6月29日に経験した浸水騒ぎによるものです。過去ブログを確かめて見たところによれば。

この時は見ている目の前で、水が店内に侵入してきたのです。その時と同じ程度なら、今日の土のうで何とか防げるでしょう。それ以上となればもう天災。

気に病んでも仕方ありませんので、今夜はゆっくり眠ることができそうです。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月05日

旧友の来訪

思いがけない人物の来訪を受けました。笑顔で店内に入って来るその途中まで、誰だか気づかなかったほど久しぶり。大学時代の同級生です。

卒業後、店主より早く東京に出て出版関係で働き、会社は疾うに退職しましたが、その後、編集プロダクションを立ち上げ、本を出したり、自らも書いたりしています。

この前会ったのはいつのことでしょう。相変わらず元気そうな様子で「駒場に来る用があったので、思い立って寄ってみた。下手すると生きてるうちに合えないかもしれないから」と、もっともな言い分。

店主が上京して50年が経ちますが、その間に会って話した(飲んだ)のは10回に満たないでしょう。それを思えば、次がないというのは、ありうる話です。

DSC_4449それはともかく今日、彼が駒場に来たのは「日本海事史学会」の特別講演会で講演される作家の植松三十里氏から、直々にお誘いを受けたからとのこと。出版社時代の後輩にあたるのだそうです。

演題は「歴史小説家が考える幕末の海防」。友人は数年前、ジョン万次郎『漂巽紀略』の現代語訳を、講談社学術文庫から出しています。そんなことも声をかけられた理由だったでしょう。講演会後に懇親会などもあったようですが、それには顔を出さず、小店に立ち寄ってくれたわけです。

ワンオペの哀しさで、店番をしながらの短いおしゃべりで終わりましたが、元気な姿を見られたのがお互いにとって何よりのことでした。

ところで今回初めて「日本海事史学会」なる組織を知り、ネットで検索してみると、もう一人懐かしいお名前に遭遇しました。会長の安達裕之さん。

もしやと思ってさらに検索すると、紛れもなく駒場の図学研究室におられた「あだっちゃん」なのでした。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月04日

漱石デスマスク

いつものようにお昼過ぎ古書会館に着いて、まず5階へ上り、私物をロッカーにしまってから、ワンフロア降りて明治古典会の会場へ。

4階には特に気を惹かれるものもなく、ひと回りしただけで3階におりました。

DSC_4381西洋古地図や、大判革装美術洋書などもありましたが、店主の守備範囲外。なかで唯一目に留まったのはIsadora Duncan, Fille de Prometheeという100部限定の画文集。

ただ、せっかく原装をくるむように革表紙をつけ、革縁の函までこしらえたものが、背が壊れているため、かえって価値を減じていました。もっとも、状態が良かったらよかったで、店主の手の届く価格ではなかったでしょうが。

最終台まで辿りつくと、ちょっと変わったものが載っていて、注目を集めています。それが「漱石死面」と桐箱の蓋に墨書された夏目漱石のデスマスク、そのレプリカでした。

このオリジナルは朝日新聞社が所蔵しているそうですが、同社が昭和41年、漱石生誕百年を記念して作成したものだということが、マスク裏面の刻印から分かります。

それだけなら、おそらくは数多く作られたであろう複製品の1つに過ぎないのですが、じつはその箱書きは、津田青楓の手によるものなのでした。つまり青楓旧蔵の1点というわけです。

物珍しさも手伝ってか、最終台に陳列された商品のなかで、あるいは今日の市会全体を通じても、最も数多くの札が入ったような気がします。

ただ、そんな複製が作られたことを知っていた業者もほとんどいなかったようですから、興味本位の札も少なくなかったと思われますが。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月03日

好不調の波

木曜日の午後は、早上がりして倉庫へ回るように努めているのですが、先週は組合総会のためそれができず、今日こそと思っていたところ、昼過ぎ頃から腰のあたりに張りを覚えて、無理はやめようと、そのまま家に戻ってきました。

最近は、日によって体調の良い時と、体の重い時とがあり、その程度もまちまちですが、昨日などは比較的よく動けたのです。それが災いしたのかもしれません。

駒場の研究室に、本の引き取りに行ったのでした。いつもの段取りで、先生がダンボール箱に詰められた本が、廊下の外に置かれています。車で行って、それを積んで店に戻ってくる。それだけの仕事でした。

というのも、引き取ってきた本は、そのまま組合ルート便で市場に運んでもらうことになっていたからです。つまり台車に積む。車に積む。車から降ろして台車に積む。この3回の積み下ろしが、店主の労働というわけです。

廊下に積まれていたダンボール箱は、全部で6箱でした。しかしほとんどが120サイズで、本を入れる箱としては大ぶり。しかもそのうちのひとつは特別巨大。持ち上げることはおろか、ちょっと動かすのさえ大変でした。

DSC_4440先生(女性です)は、そこに箱を置かれてから、本を詰められたのでしょう。他の箱についても、おそらく同様だったはず。

5つの箱はそのまま台車に載せました。しかし最後の1箱は、開けて他の箱の上にバラ積みし、なんとか1回で車まで運ぶことができました。

結局この3度の積み替えが、今日の腰の不調の原因でしょうか。かばいながら作業したつもりだったのですが。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月02日

直にお問合せ

DSC_4438昨夕、1通のメールに気がつきました。件名が英語でBook order。送信者も外国人名です。ジャンクメールかと警戒しつつウィンドウを覗くと、まともなご注文メールのようでした。

書かれているのは英文です。翻訳ソフトの手を借りるまでもなく用件は理解できましたが、いまその内容をGoogle翻訳にかけると以下のとおりです。

ウェブサイトで貴店のメールアドレスを拝見し、ご連絡いたしました。現在、数週間ほど仙台に滞在しており、息子のためにフランス語の本を探しています。探しているのは、フレッド・ヴァルガス(Fred Vargas)の『L'Homme a l'Envers』という本です。ウェブサイトで見つけたその本の画像を添付いたしましたので、ご確認いただけますでしょうか。

文末に現在の居所が記されています。家に戻ってから返信メールを書きました。その際は、翻訳ソフトの助けを仰いでいます。在庫があるということ。送料を含めると1,360円になるということ。明朝クレジット請求書を送るので、決済が確認できればすぐ送るということなど。

そして今朝、クレジット決済用のメールを送ると、ほとんど間髪を入れず、決済通知が入りました。すぐ荷造りして、今日中に発送しております。

発送した旨をメールしたところ、Ok, wondeful.という短いメッセージが返ってきました。喜んでいただけたようです。

今夜あらためて、この書名をGoogleで検索してみました。なるほどAmazon商品に並んで「日本の古本屋」と小店名が表示されています。比較されたのかもしれません。選んでいただいた決め手は、価格もさることながら、日数だったように思われます。

だからこそ直接メールをくださったのでしょう。「日本の古本屋」でも、すぐ届くということを、もっとアピールしたほうが良いかもしれません。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年09月01日

洋書まつり2026

今日から9月。

夏休み中、遅くとも30分以内には店に着けていた自動車通勤が、今朝は久々に40分以上かかりました。児童の通学時間帯であることも一因でしょう。交通量自体も少し多かったようですが。

店を開けてからも、昨日までと違って、朝のうちに何人かのご来客がありました。これは新学期とは直接関係ないと思われますが、人が戻ってきたような予感を抱かせる立ち上がりでした。

昼前に店を出ましたから、あとの様子は分かりません。ただレジを締めたところ、昨日までの売上よりは確かに良かった。これが続くかどうかが問題です。

洋書会は出品量少な目。じっくり見ることができたものの、入札したのは1点だけ。その1点も敢えなく敗戦。本日は成果なしに終わっております。

yoshomatsuriさて今日、「洋書まつり」のポスターとチラシが出来上がってまいりました。明日には店先に置くつもりです。

世話人を引き継いでくれた三日月書店の山崎さんの話では、今年は参加店数が増えたため、全体の展示台数が多くなるそうです。

それ自体は良いニュースなのですが、これまでのようなゆったりした会場設営が難しくなります。とくに大量お買い上げのお客様の、お取り置きスペースが、確保できなくなることが予測されます。

会場の椅子に座り、じっくり本を吟味してお買い上げいただくという、一時期の「ゆとり」は望むべくもなさそうです。

しかし会にとっても、お客様にとっても喜ばしいことには違いありません。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年08月31日

二人のMax

先週の明治古典会でマックス・エルンストの Une semaine de bonte という5冊本が、フリ市で結構な値段に競り上がったということはお伝えしました。

確かにAbeBooksなどで見ても、それなりの価格で出ていますが、とくに珍しいというほどのものではなく、その点では同じ日に競りにかけられた中原中也『山羊の歌』と似ているかもしれません。

98433別にケチをつけるつもりはありません。たまたま店主の持っているもう一人のMax、マックス・ジャコブの同じく5冊本と比べて、その違いはどこにあるのかと、つい考えてしまったのです。

マックス・エルンスト(Max Ernst, 1891年4月2日 - 1976年4月1日)は、20世紀のドイツ人画家・彫刻家。/ドイツのケルン近郊のブリュールに生まれ、のちフランスに帰化、さらにアメリカ合衆国に亡命した経緯からフランスとアメリカ両方の国籍を有した。ダダイスムを経ての超現実主義(シュルレアリスム)の代表的な画家の1人である。作風は多岐にわたり、フロッタージュ(こすり出し)、コラージュ、デカルコマニーなどの技法を駆使している。

マックス・ジャコブ(Max Jacob フランス語: [maks ʒakɔb]、1876年7月12日 - 1944年3月5日)は、フランスの詩人・小説家・劇作家・画家・美術評論家・ホロコースト犠牲者である。アポリネールとともにキュビスムを代表する特異な詩人、ダダイスム・シュルレアリスムの先駆者として新しい散文詩を確立した。


それぞれWikipediaからの引用ですが、二人の違いは画家としての評価でしょうか。しかも前者は、その作品がふんだんに掲載された限定版であるのに対し、後者はほぼ文字資料。おまけに限定版ですらありません。

とはいえ、さほど多くの部数が印刷されたとも思われませんから、もう少し評価されても良い気がするのですが——と思いつつ、値をつけてネットに上げてみました。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年08月30日

見逃して売り逃す

ネット登録品の在庫管理は、店の棚に記号、番号を振って、それをデータに記入しておくことで対処しております。

店の棚にはaからzまで、と言っても使っていないアルファベットもありますが、ほぼ1列ごとに記号をつけており、そのそれぞれの列の棚には、数字で順番をつけてあります。

さらにその棚の段ごとにも番号を振り、それをデータに記録している場所もあるのですが、それは裏の在庫スペースだけ。店内の棚については、多少移動させてもいいように、段までは記録していません。

そんななかで今朝ご注文いただいた1冊は、裏の移動棚にあるものでした。何本目の何段目、までデータに記載されています。

すぐ見つかると思ったのに、なかなか見つかりません。記載ミスか、売れてしまったのか、何度もデータを確かめたり、ほかの場所も探したりしました。

結局は、記載通りの場所に見つけたのですが、これだけ限られた場所を探すのにさえ、ずいぶん時間がかかることがあるのです。

実は、その注文書を探しているとき、つい2日前、どうしても見つけられずに「在庫切れのお詫び」メールを送信した本が見つかりました。なぜこれが目に入らなかったのかが不思議なほどの大きな厚い本。

DSC_4418これが通常のお客さまなら、ご連絡すればお買い上げいただける可能性もあるのですが、今回のご注文者は代行業者さん。

無理かなと思いつつ、「本が見つかった」というご連絡だけはして、もう一度「日本の古本屋」に出品しております。

はたしてご注文が入るでしょうか。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)

2026年08月29日

特選市余話

DSC_4426一日遅れの話題が続きますが、日が経って見る分には同じことでしょうから、気にせず取り上げることにいたします。

昨日の金曜日、明治古典会は月末恒例の特選フリ市でした。

この日は業者向けの案内メールによれば「佐谷画廊旧蔵 作品、資料などカーゴ2台」「美術品のひと口 絵画、版画などカーゴ5台」、それに加えて「文学のひと口 カーゴ5台」「文学署名本、草稿の口」と盛りだくさんの出品。関心を持った同業も多かったと思います。

会場に行ってみると、興味深い出品物が、何点もフリに回されていました。

そのため入札会終了後のフリ市にも、いつもより多くの業者が残っていたような気がします。

一般に画廊の旧蔵資料というと、あまり魅力のないものが多いのですが、さすがは佐谷画廊。資料と言っても美術品に近いものも多数含まれていて、それらはどれも良い値段がつきました。

たとえば『マックス・エルンスト Une Semaine De Bonye 慈善週間または七大元素 5冊揃』

また、これは画廊とは別の口だったらしいのですが、『瑛九フォトデッサン作品集』も高値に競り上がりました。

美術資料に席巻された感のあったこの日の特選市にあって、明古らしさを発揮したのは『山羊の歌 中原中也 献呈署名入』です。

今月初めの南部入札市にも出たばかりでしたが、本の状態が段違いで、落札価は南部の3倍以上。ただし落としたのは同じ業者。これは、「良い方を他者に渡せない」という思いが働いたためかもしれません。

konoinfo at 20:30|PermalinkComments(0)
年末年始を除き
年中無休で
営業しております
Profile

河野書店

Archives